25〗AFAS Stadion / アルクマ-ル

一方アヤックスでは同点ゴ-ルを決めたノア·ラング:Noa Lang【1999年6月17日生】。翌週のトップチ-ムでの対戦に向けて好調をアピ-ルすると翌日のPECズヴォレ戦のベンチ入りメンバ-に。残り七分ヨハンクライフアレナのピッチに立つと、見事なクロスで決勝ゴ-ルをアシストする派手なエールディヴィジデビュ-を飾っていた。このAZ戦はティルに得点を許した八分後、ファン·デン·ブロムは再びラングをピッチ上に送り出したのだがそこは柳の下の泥鰌で沈黙。
そしてヨング·アヤックスの主将だったのがダニ·デ·ウィト:Dani de Wit【1998年1月28日生】。既にトップチ-ムの常連ながら三十試合にベンチ入りしながら出場時間は僅か四十三分。すっかり主戦場はU21の二部になっていた。するとシ-ズン終了後AZアルクマールが移籍金二千万ユーロで獲得に動く。その財政規模からすると破格の大型補強だった。一方三年後の2022年7にワインダルがアヤックスへ完全移籍。移籍金は一千万ユーロ、五年契約で合意のサインがされる。
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0-5大敗のリべンジと十年前のナイジェリア組

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このシーズン(18-19)終盤第26節、その前の対戦は第7節10月7日。スタメンでセンターバックに入ったのは元アヤックスのリカルド·ファン·ライン:Ricardo van Rhijn【1991年6月13日】。しかし試合結果はファン·ラインのオウンゴールも含めてビゾットには屈辱でしかない五失点。攻撃陣も零封されての大敗。ふと思い出し記録を調べ直したのが2010年の三月、U19チーム同士の対戦。ファン·ラインがセンターバックでゴールキーパーはビゾット。但しこの時はAZではなく共にアヤックスのウェアを着ている。試合は0-4でホ-ムチ-ムが完敗しており、若き才能集団の中でも出色の存在だったのが二点目を決めたチ-ム最年少のダフィー·クラーセン:Davy Klaassen【1993年02月21日生】少年。
一方敗れたAZユースで光る存在は学年にするとクラーセンよりももうひとつ下のアダム·マヘル。半年前(09)年にナイジェリアで開催されたFIFA·U-17ワールドカップのオランダ代表として全三試合に出場しているマヘル。この日対戦したアヤックスU19には共にナイジェリアで戦った五人のうち三人が出場していた。
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写真はデ·トゥーコムストでの撮影。十番クラーセンはU17の大会でMVPに。U19アルクマール戦から二十日後の試合だったが、同年代ではバルサやリヴァプールにも彼ほどのプレ-ヤ-は見当たらなかった。不思議でならないのがこの世代では突出していた記憶のクラーセンが、なぜかナイジェリア行きのメンバーから抜け落ちたこと。彼を入れるとひとつのクラブから六人は確かに多すぎる気もするがアヤックスならばと思うのは身内贔屓でしかない。
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ユースを欧州一に導いたマネー(フット)ボール

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プラン·クライフが始動する直前ではあるが、このデ·トゥーコムストを見る限り、この時点では、アヤックスとAZを比較すると育成環境において大きな差が開いていたのは間違いない。エーンホーンは就任後、先進的なデータ分析部門の設立に迅速に着手し、担当者の人手を増やすと、1100万ユーロの予算でユースアカデミーのトレーニング環境を改善、育成組織と若手への投資を重視した。その成果が遂に実を結んだのが2022-23UEFAユース·リーグ。オランダのクラブとして初の決勝進出を果たすとクロアチアのハイドゥク·スプリトを破っての戴冠。これはオランダ国内のみならず欧州でも屈指の”育成の”名門として一目置かれるアヤックスのファン·サポーターは苦虫を噛み潰しながら歯ぎしりをるしかない。但し前述のとおり、フース·ティル、コープマイネルス、ワインダルと、エーンホーンGM就任時AZU18ユ-ス世代からは、一学年ごとにA代表プレ-ヤ-を輩出しているのだから育成投資への効果は、早い段階でその兆しが芽吹いていた。十五年前、紙面を流し読みして眉間に皺を寄せたAZの負債額は、今や有望な若手一人の移籍金でペイできる時代。文字にするのは、簡単ではあるが、この育成環境を整えるのにどれ程の資金と労力を費やしたことか。オランダ版“マネー(フット)ボール”の成果は実を結んだようだが、まとめきれなかったので次回も引き続き、AFASスタディオン編。〖第二十五話了〗


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⏹️写真/テキスト:横澤悦孝 ⏹️モデル:有坂かずさ