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サンキュー、ドグ!!リバウドを想起させたドウグラスのいたサンフレッチェの1年

 2015年、ドウグラスは大きな期待を受けてサンフレッチェへやって来たわけではなかったかもしれないが、クラブは彼の適正を見抜いていた。そして、それは実際にシャドーに定着させた森保一監督も同じだろう。チームに同じようなストロングポイントを持った選手がいなかった事も、彼を獲得した大きな要因だった。

悲願の四国勢J1初昇格を牽引した元同僚・柴崎との再会

 しかし、ドウグラスはサンフレッチェへやって来た時、Jリーグでも特有のシステム<3-4-2-1>の可変型フォーメーションを採用する“広島スタイル”にフィットするのにも苦労した。阿吽の呼吸に基づいたワンタッチパスの連続によるコンビネーション攻撃にも上手く絡めていなかった。

 開幕からシャドーの先発にはチーム生え抜きのベテランMF森崎浩司と、リオディジャネイロ五輪出場を目指していた当時のU22日本代表FW浅野拓磨が担っていたし、浅野と同じくU22日本代表で同期のMF野津田岳人にもブレイクの予感が漂っていた。

 ただ、そんな時に救いだったのは、徳島でJ1昇格を勝ち取った2013年シーズンにチームメートとしてプレーしたMF柴崎晃誠の存在だった。2013年に柴崎は1年だけ徳島でプレーし、トップ下やサイドMF、ボランチなど中盤ならどこでもこなす大車輪の活躍を見せてJ1昇格に大きく貢献。どこで起用されても、彼の役割は司令塔であり、1トップや2トップの1角としてプレーするFWドウグラスを操っていた。

 2014年、徳島での大活躍を評価された柴崎は、2012年と2013年のJ1リーグを連覇していたサンフレッチェに引き抜かれた。そして1年経った2015年、柴崎とドウグラスは広島で再会した。ただ、徳島悲願のJ1昇格の立役者であるホットラインもサンフレッチェでは苦戦していた。柴崎はボランチとしては1年目で失格の烙印を押された形、ドウグラスも前述のようにベンチスタートだった。

 それでもその苦悩を糧として成長を見せる2人は、森崎浩司の負傷や浅野の度重なるU22代表招集でトレーニングに参加できない時期にアピール。ボランチだった柴崎、FWだったドウグラスが共にシャドーで先発起用されたのが、開始1分も経たないうちに日本代表FW武藤嘉紀(現・マインツ/ドイツ)に先制点を許した第1ステージの第6節・FC東京戦だった。イタリア人の知将=マッシモ・フィッカデンティ監督(現・サガン鳥栖監督)が作り上げた緻密な守備組織により、2015年シーズンのFC東京は先制点を挙げれば17勝1敗だったが、その1敗がこの日だった。この時期の柴崎とドウグラスは完全にチームにフィットしてはいなかったかもしれないが、2人の間での連携には阿吽の呼吸と信頼感が出来上がっていた。結果として、この試合はドウグラスのアシストで柴崎が同点弾を挙げ、途中出場の浅野がJリーグ初ゴールとなる逆転弾を決めて勝利した。“新シャドーコンビ”の柴崎&ドウグラス、“スーパーサブ”浅野が確立されたのだ。

 昨年までのシャドーコンビである高萩と石原も、もともとはボランチとFWだった。トップ下のイメージが強い高萩はユース時代に展開力のある3列目の選手だったし、石原も大宮アルディージャ時代までは点取り屋としてプレーしていた。柴崎とドウグラスは彼等とはまた違ったタイプだが、コンビとしての補完関係は似ているのかもしれない。

 「日本大好き」という外国籍選手はJリーグも当然多くいるが、「好きな日本食は?」と言えば、トンカツやカツ丼、天丼、牛丼のような日本食とはいえ味の濃いモノがよく挙げられる。そんな中、「うどん大好き」で、夏の暑い時期でも温かいうどんを頬張るドウグラスが筆者は大好きだ。(FW/DF盛田剛平<現・ヴァンフォーレ甲府>がサンフレッチェに所属している時期に加入していれば、ラーメン好きになっていたかもしれないが・・・。)

 そんなドウグラスは、サンフレッチェにたった1年舞い降りた「天使」のような存在だった。

 2003年にはAFCアジアチャンピオンズリーグを制覇したUAEの名門クラブであるアル・アインに移籍したドグは、すでに1月23日に行われた国内リーグで初先発初得点を記録。UAE代表で、昨年のアジアカップで3位へ導いた天才肌のMFオマル・アブドゥルラフマンを始め、今年のACLにも出場するアル・アインは良い意味で中東らしくなく、テクニカルな好チームとなるかもしれない。東アジア勢とは決勝まで対戦できないレギュレーションだが、ドグやオマルの活躍によるアル・アインの活躍にも期待して本稿を締めたいと思う。