欧州蹴球文化探訪 第五の巻 リスボンで盗み見たシナリオ

ビートルズ世代の洋楽好きおじさん以外で、YOU’LL NEVER WALK ALONE を知っている方はリヴァプールFC のサポーターと疑われても仕方がない。
この題名を「一人じゃ無いって素敵な事ね」と訳す方は70年前後、天地真理が好きだったおじさんに違いない。

ラファエル ベニテスとアイマール。かつての師弟、母国の古巣に帰る

2ヶ月程前、日本でもDVDが発売・レンタルされたのが名優ジェレミー・アイアンズ主演『リスボンに誘われて』。欧州のどの都市とも微妙に異なる独特で素朴な味わいがあるリスボンの街並みを背景にドラマは進んでいく。
ラファエル・ベニテスの名前はヴァレンシアでの国内制覇とUEFA杯獲得により日本にも伝わった。当時このチームで眩い程の輝きを放ったファンタジスタこそ、パブロ・アイマールである。

彼もベニテスの帰還と時を同じくして、古巣リーベルのユニフォームに袖を通してピッチ向かった。8月には旧友サビオラと共に来日するかもしれない。この話題がネット上で予想以上に盛り上がり、今も変わらぬアイマールの日本における人気に少々驚いている。国内ではNHK・BSで98〜2003年までリーガを放送されていたのも大きな要因に違いないが、急速なインターネットの普及により、紙媒体一辺倒から世界の必要な情報を自身で入手できる時代に変化したことで、スペインと日本の距離が縮まったことが影響している。
負傷も重なりスペインで不遇の時を過ごしたアイマールはルイ・コスタの薦めもあり2008年ベンフィカ・リスボンでの再起を誓いポルテーラ空港に降り立った。

ポルテーラ空港

リスボンで実現した師弟対決。しかし続編の主役は別にキャスティングされていた

2009ー2010シーズンのベンフィカは国内では桁違いの強さで白星を重ねた。惜しむらくは、前年CLの出場資格を逃していたことである。
それでも名称を変更、再編により注目度も高まったヨーロッパリーグではベスト8まで順当に勝ち上がる。準々決勝ベンフィカの対戦相手はリヴァプール。師弟対決を両国のメディアは煽った。リーガ時代アイマールは「リヴァプールへの移籍を希望するか」と度重なる記者達の質問に否定はしていない。初戦はベンフィカのホーム 、エスタディオ・ダ・ルス。

『リスボンからの誘い』にのり、アムステルダムから空路移動。市街に繰り出しなぜかビールを飲むレッズサポーターと意気投合して一緒にあの曲を合唱する。ビールの銘柄はサグレス(ポルトガルリーグ一部の冠スポンサー)なのでどうやらカールズバーグしか飲まないわけでもないらしい。

チケットとビール

控えキーパーは腕で貢献できなくとも頭で輝く

試合はアウェイのリヴァプールが先制するが、退場者により自慢の4-2-3-1は崩壊。カルドソに与えられた二度のPKをスペイン代表キーパーのペペ・レイナでも止められず逆転負け。本来熟成されるべきサッカーはシャビ・アロンソが抜けた綻びを修復出来ぬまま時間だけが過ぎていた。