フランスは理念を 英国は経済を
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民衆が立ち上がり封建的な領主権と身分制度の幕を閉じたフランス革命は1789年から約十年間の出来事。自由·平等·博愛の理念が国旗のトリコロール色に現在も象徴されている。青の自由と白の平等はイメージ通りではあるが赤の博愛はピンとこない。それでもこの革命理念は海峡を越えて英国民の社会思想に大きな影響を及ぼしたのは間違いない。一方イギリスの産業革命。その始まりは綿工業の機械化を皮切りに、多分野での発明による革新の波が押し寄せ、資本主義経済が確立された。この新たな時代の波は欧州全土に普及した。中でも筆頭はフランス。
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1780年には蒸気機関が実用化され、その象徴たる機関車がお目見えするのは1825年の英鉄道開業。その七年後には仏国初のサン=テティエンヌとリヨンを結ぶ旅客路線が開業している。約半世紀遅れて明治五年日本でも新橋/横浜間で鉄道が開通するのだが、横浜とリヨンは姉妹都市の関係。しかしこの産業革命による社会現象の課題を欧州だけでなく日本でも未だ解決できていない。それが人口の都市集中化、地方の過疎化である。
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消滅したアメリカ経由のリヨン行きのプラン
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2011-12シーズン、リーグドゥを二位でフィニッシュ。三十四年年ぶりにトップリーグに戻ってきたスタッド·ランス。それ以来となる衝撃の二部降格。日本のランス三兄弟の長男次男は今季限りで退団すると思って間違いない。今更二部レベルならばかつてプレ-したベルギ-やオ-ストリアの一部レベルのほうが遥かに良い。伊東純也:Junya Ito【1993年3月9日生】はブラジルの強豪ボタフォゴに移籍して現在開催中のFIFAクラブ·ワールドカップに出場してから同じくイーグル·フットボール·グループ傘下のオリンピック·リヨンに移籍する妙なプランが噂されたが実現せず。一昨日、フランスのクラブチームの財務状況を監督する国立経営管理局(DNCG)は24日、リヨンが多額の負債を理由に二部降格を発表。リヨンは暮らすのであれば、ランスに負けず劣らず環境は申し分のない美食の街だから残念でならない。
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第42話はスタッド·ランスの本拠地、スタッド·オーギュスト·ドローヌ。今更ではあるが、フランスは政治·経済·文化その他総じてパリありき。パリとその他地方都市で構成されている国。パリの人口は二百二十万人でも近郊を含めた首都圏になると千二百万人。国土の僅か二パーセントの面積に二割近くのフランス国民がぎゅっと集まり暮らしている。二位のマルセイユは八十五万と半分にも満たない。三位はリヨン、四位のトゥールーズになると五十万程度。数多くの日本人がプレーしてきたことで、日本でもお馴染みなのはオリンピック·マルセイユ。五百キロ弱の東京~大阪間は新幹線で二時間半。それに比べてパリとマルセイユが八百キロ離れているからTGVでも三時間半かかる。しかし大阪関西空港からパリ行きの直行便はあっても東京-マルセイユ間の直行便はない。マルセイユ·プロヴァンス空港からの欧州圏外路線はチェニス、カサブランカ、トリボリの北アフリカに限定される。トゥールーズからもアジア、中東方面の路線は当然ない。パリからTGVで四時間半はかかる。だったら三時間半で着くバルセロナからのルートのほうをお薦めする。昨秋の南仏訪問もブダペストから二-スへの欧州内での空路移動だった。つまり日本だけでなく、他大陸からフランスに入国するのであればパリの関所は避けられないのが実情。
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そこで本題のランス。マルヌ県最大の都市で人口は十八万規模とそこそこ都会。何といってもパリ東駅発のTGV自分の座席を見つけ腰を降ろし落ち着けたかなと思った途端速度が緩む。百三十キロ程度の距離は五十七分で到着。パリに宿を手配しナイトゲ-ム観戦のスケジュ-ルを組むのも充分に可能。かなりの数の日本人ファンがこのスタジアムを訪れているのではないだろうか。ランス駅の駅舎は1858年の開業。二十世紀の遺産に指定されるだけあって見事な建築装飾。但し水色のペンギンは意味不明。黄色に塗られた部分はないのでウクライナへのエールではないのか。
トラムの停車場はガル·サントル=中央駅前と表示されているから別の駅ができてこの呼び名が定着したのだろう。カバー写真のチケット(カード)を購入した。ところが10分待ってもトラム乗り場に人の気配がない。通りがかった男性が「待っても来ないよ」と親切に声をかけてくれたが来ない理由は不明。ならば歩くまで。
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古豪なる言葉はランスのためにある
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