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スぺランツア高槻VSジェフ千葉L ~スコアレスドローも若手が躍動したスぺランツァ

 スぺランツァはこの日もINAC戦と同様に右CBに配置された佐藤が代表FW菅澤をマークしてクロスを跳ね返し、注目の20歳MF成宮は左ウイングのポジションで先発し、ポストプレーをこなすFW丸山の落としを受けてドリブルで切り込んだり、鋭いミドルシュートで観客を沸かせました。
 ジェフの方がミスも多かった事もありますが、この2戦での試合内容だけを見れば全く最下位とは思えない好ゲームを披露しているだけに、成宮には今季初得点の期待をしていました。

 しかし、得点が生まれないのは結果が出てない事の悪循環か?
 上位チームのジェフに対して好ゲームを進める中で得点が生まれないとなれば、まだ人数のかけ方などで一歩足りない攻撃にリスクを賭けるよりも、今の流れを続ける選択を取るようなプレーが多く、どうしても1点が遠く感じるような展開に。
 「1得点」よりも、「勝点1」を狙っていたか?ジェフもリスクは避ける試合運びをしたため、クロスがゴール前へ上がる時以外は得点の臭いは感じられず。

 それでも成宮は相手のセットプレーを跳ね返してからの速攻でドリブルで持ち上がったり、左サイドでタメを作って全体の押し上げを促すようなプレーをしたりと創意工夫。彼女はおそらくトップ下が本職の選手で、かつてのロナウジーニョや現在はラツィオでブレイクしたブラジル代表MFフェリペ・アンデルソンのように個人能力の高さをチームに還元させるために左ウイングで起用されているように見えます。
 ただ、それならば彼等のように得点を量産したいところですが、何度かあったシュートチャンスでも枠を捉える事はなく。たとえ枠を捉えても、代表GK山根が仁王立ちするゴールを割る事は出来ず。

 終盤は運動量の落ちたスぺランツァが危険なエリアでファウルを多く取られてセットプレーからピンチの連続。得点王の菅澤をフリーにしてしまう場面もあったものの、相手の決定力不足にも助けられて均衡を保つのがやっと。
 丸山や成宮を替えて、長身のパワープレー要員を次々と投入する本並健治監督の采配も失敗に終わりました。コンパクトラインや、プレスの連動性というチーム作りの面では好印象の本並監督ですが、今は勝敗以上に、すでにエキサイティングシリーズ用のチーム作りを想定している、というところなのかもしれません。

 結局、成宮が個人では興味深いハイパフォーマンスを見せたものの、試合の方はスコアレスドロー。ただこの勝点1により、スぺランツァは最下位を脱出。若手も多い編成の中、徐々にチームを固めながらレギュラーシリーズの残り6試合を戦います。

格差を感じざるを得ない運営の現実

 スぺランツァが最下位とは思えない内容の濃い試合を2戦続けて見せてくれ、成宮や佐藤のような興味深い若手選手の活躍も観れた事は面白かったのですが、ピッチ内外で先日のINAC主催ゲームとの違いは明らか。
 筆者はこの競技場で高校生時代にプレーした事があるので分かっていたとはいえ、小さなメインスタンド以外は芝生席で真夏の昼開催はきつい。
 このマッチ・デー・プログラム(MDP)をご覧になっていただければ、その差はさらに一目瞭然。

 INACのモノがしっかりと見開きページの上等紙を使用し、その試合前後のチーム状況を伝える詳細な記事や、選手個人にスポットを充てたインタビュー記事があり、広告もばっちりと存在感を放っている「読み物」として成立しているのに対して、スぺランツァのモノはコピー紙1枚。それも500冊(枚とカウントすべきか?)限定で、広告はバナーのみ。でもINACではなく、こちらが女子サッカーの現実。

 現状はテレビ中継も皆無に近いなでしこリーグですから、足を運ぶファン・サポーターが何かしら工夫するしかないのでしょうが、せっかく女子サッカーの競技レベルが確実に上がっている事が明確なのにコレでは4年前とあんまり大差ない環境。
 変にテレビ中継を増やして放映権や著作権料を釣り上げてしまうよりも、まずはスタジアムに足を運ぶ事に「お得感がある」というイベントとしての企画力が必要なのかもしれません。