今大会のグループリーグはA~Dの4つ組に分けて行われ、その日程は開幕戦の豪州VSクウェート以外は1日に各組ごと2試合ずつを消化してきました。よって、17日にグループリーグ最終戦を終了したA組、同18日終了のB組が22日に準々決勝を戦いました。実力的にも差があった事、韓国と豪州が2試合でグループ突破を決定したこともにも加えて、日程にも休養日が1日長かった韓国と豪州が勝ったのも当然の結果と言えます。同19日終了のC組と同20日に終了のD組の場合は23日に準々決勝が行われ、日本とイラクは中2日の強行日程に巻き込まれました。C組もA組同様に2試合でイランとUAEのグル―プ突破が決まったいたも含めて日本とイラクの負担は大きかったと言えます。
各試合を振り返ると、韓国VSウズベキスタンは両国共にミスのオンパレード。体調不良者や負傷者が続出する韓国は連携が定まらずに軽率なミスもありながら延長戦に入ってドイツの強豪・レヴァーク―ゼン所属のエースFWソン・フンミンが2発決めて勝利しましたが、けしてレベルの高い試合ではなかったと言えます。2ゴールしたソン・フンミンも体調不良で先発出場も危ぶまれていた状況でしたが、延長戦で真価を発揮。しかし、それまでに決めきる機会はあったと言えます。ウズベキスタンにも決定機があったのに決めきれない。その中で体調不良のエースが延長戦で決めたこと、今大会4試合連続完封無失点という筋書きとしては申し分ないのですが、ウズベキスタンの情けない戦いぶりもあって試合としては拍子抜け。ソン・フンミンも2点目を決めたシュートで脚を攣る状態でしたが、今後はどうなるのか?
そんな中、中国VS豪州では豪州の順調な仕上がり具合が観てとれました。当コラムでは今大会は豪州にスポットライトを当てて来ました。この準々決勝でも実力差があったとはいえ、中国相手に押し込み、地元サポーターを楽しませる攻撃的なサッカーを披露していました。グループリーグでの8得点を全て違う選手が奪っていた事からも証明されるように、“どこからでも得点のとれるサッカー”を展開していたのですが、この準々決勝で遂にエースFWティム・ケーヒルが2得点。しかも、オーバーヘッドでの1点目、代名詞の高いジャンプ力から繰り出す強烈なヘッドによる2点目という美技による2発で千両役者ぶりを発揮したのはお見事。そのケーヒルをグループリーグでの試合出場時間を半分にして温存したり、中国戦でベテランMFマーク・ブレシア―ノを初先発起用するなど、アンジ・ポステコグル監督の采配、マネージメントも功を奏して来たと言えます。彼等2人のベテラン選手を残した上での大胆な世代交代、パワープレーからパスサッカーへのスタイル変更を行った大改革も含めて、監督の手腕や協会の判断は評価されるべきでしょう。開催国のアドバンテージも大きく、彼等が優勝候補筆頭で間違いないです。
イランVSイラクは、正直言ってイランが圧勝できるくらいでした。しかし、前半に先制点を挙げたイランでしたが、40分頃に退場者が出て大誤算。日本同様に主力選手の顔ぶれがブラジルW杯メンバーから継続されているベテラン選手中心の選手構成も、試合時間の大部分を1人少なく戦うには負担が多過ぎたと言えます。それでも粘って3得点したわけですが・・・日本と違ってデーゲーム開催の試合であったことも含めてPK戦でも不運に敗れた印象。勝ったイラクは2013年のU20ベスト4進出から優秀な若手台頭。今大会参加16ヶ国の登録メンバー平均年齢で最年少となる22.6歳。ベテランVS若手の試合となる安価で、下部年代ではアジア最強を体現しているイラクが勝った事は誇らしい事だと思います。当コラムでも躍進を期待していましたので準決勝以降も応援したいと思う国です。
日本は・・・基本的には日程の影響も大きかったと思いますが、日程は最初から決まっているし、デーゲームでもない。夏だからという特別な戦いをしなくても圧倒出来る実力差はあったのですから言い訳も出来ません。そもそも大会前からハビエル・アギーレ監督の八百長疑惑を“疑惑”のままで解任が“妥当”だなどと、周囲が国内でチームを支援する雰囲気が作れていなかったので、釈然としない部分が多過ぎます。ただ、4年前の優勝は試合内容からすれば”偶然”に近い勝利の連続でしたが、今回は4試合とも相手を寄せ詰けない域のプレーは見せていました。ただ、完成度が高いのはイラン同様にベテラン選手が多かったからでもあります。敗因は改めて別稿にて述べたいと思います。
今大会でベスト4進出した韓国・豪州・イラク・UAEの4ヶ国に共通するのは、共に苦しみながらも世代交代に着手してきた事。豪州は今大会が開催国であることも踏まえて、ブラジルW杯さえ若手の経験の場として利用したと言えるほどでした。下部年代ではアジア最強のイラクは“黄金世代”が誕生していますし、UAEも長年の監督の首を挿げ替えるだけの強化策ではなく、指導者も選手と共に下部年代の代表チームから昇格させて来ました。韓国も前回大会辺りから従来の泥臭さだけでなく、テクニックとアイデアのある若手選手が台頭してきたので、同じような傾向があるでしょう。
大会前には世代交代が成功したかどうかが言えない状態にあった4ヶ国ですが、コレで自信も手にした上での本物の経験値を積んでいけるのではないでしょうか?一方で日本とイランの敗退はこのテーマに沿って考えると世代交代を強行する踏ん切りをつけるキッカケとする事を収穫にしなければいけないとも言えますが・・・両国共に下部年代の代表が台頭していないのが気懸りです。
【準決勝プレビュー】順調なのは豪州のみ 中東2ヶ国は格下の戦い方に徹する戦いができるか?
<準決勝対戦カード>
26日、韓国VSイラク
27日、オーストラリアVSアラブ首長国連邦
そんなわけでベスト4に進出した若手集団4ヶ国は準決勝で敗れたとしても3位決定戦があるので、大きな国際舞台であと2試合を経験する事が出来ます。当然ながら決勝進出・優勝を目指すのわけですが、実力的には中東勢2ヶ国は共にPK戦勝ちと日程的に相手より休養日が1日少ないというハンディーキャップだけでなく、実力的にも韓国・豪州には大きく劣ります。
特にイラクは下部年代ではアジア最強でも、フル代表ではそうではない現実を前に、若手エリート選手たちが“格下の戦い方”に徹する事が出来るか?がポイントになるでしょう。イラン相手にその戦い方にややアレルギーを感じさせていました。特に武器であるはずの“アジアのギャレス・ベイル”と言われるアリ・アドナン、イスマイル・クリーシの2人による左サイドからの攻撃が通用しなかった時がメンタル面から崩壊していく可能性もあります。
その分、UAEは前回王者の日本に続き、開催国・豪州と格下に徹する心構えは出来ている事と、今大会誰もがワールドクラスと認める天才MFオマル・アブドゥルラフマンがいるのも心強いとは思います。そうは言っても、日本は突く事ができなかったファーサイドへのクロス対応の脆さは顕著。豪州がパスサッカーを披露しながら、遂に役者ぶりを見せ始めたケーヒルがファーへ流れてクロスを折り返すようなパターンを使う事で、どこからでも得点できる強みは、ゴール前へ入って来る人数の多さや攻撃の迫力として発揮出来ればUAE攻略は容易いでしょう。
そんな順調な豪州の攻撃の軸となり、10番を着ているFWロビー・クルーゼは所属クラブのレヴァーク―ゼンでは定位置を掴めていません。彼のポジションには韓国のソン・フンミンがいるのですから。
やはり、決勝はほぼ間違いなく韓国VS豪州のグループA突破組の再戦となるでしょう。
以上、世代交代に着手した国が躍進する今大会は興味深いと捉え、当コラムでは準決勝・決勝もアジアカップの戦いを書き綴りたいと思っております。読者の皆様、よろしくお願い致します。