☆「創造」のユナイテッド
一方のユナイテッドも、決して昨夏の補強に成功したとは言えない。大枚をはたいて獲得したディ・マリアやファルカオはチームにフィットせず、今回のスタメンに選ばれた11名はモイーズ政権時と同じだった。しかし、彼らには失ってしまった地位を取り戻そうとする意欲があった。
再びプレミアの頂点に立つべく、今は新たな時代を「創造」している時なのだ。選手たちにはユナイテッドを変えようという熱意があり、ルーニーら古株にもフレッシュさが見て取れる。まずはCL出場権、そして次はプレミア優勝を狙うという明確なルートが見えており、選手たちには活気がある。
モイーズ政権で大いに乱れたユナイテッドだが、それを1年で立て直したファン・ハールは今季のプレミア最優秀監督に選ばれてもおかしくない。ウィルソンやマクネアといった10代の選手も積極的に起用し、若手とベテランが上手くマッチしている。
攻撃面では未だ個の技量に頼っている部分があるが、ファン・ハールはバイエルン時代もロッベンとリベリに依存しており、この部分を改善するのは難しい。しかしチームはプレミアの中で3番目に失点が少なく、非常に安定している。
問題は来季もこれを継続できるかだが、「創造」の時期にある現在であれば問題ないだろう。それどころか、来季には優勝戦線に加わってきても不思議はない。それほどこの1年での「創造」は大きな意味を持つものだった。
ただ、今季のユナイテッドは8年前のシティと同じ立場にある。イングランドで過去に素晴らしい実績を残している点では少々異なるかもしれないが、ユナイテッドも大型補強を軸にチームを新たに構築していった。
言い方は悪いが、金さえ積めばクラブはある程度強くなる。しかし、それを維持していくのが難しい。つまり創造から安定の時期に移行するのが難しいのであり、何十年にも渡ってユナイテッドを安定させたファーガソンは異常とも呼べる所業を達成したという事だ。
ファン・ハールが組み上げた土壌を上手く活用すれば、ここから2~3年は強さをキープできるだろう。それまではユナイテッドサポーターも歓喜を味わい続ける事が出来る。来季に優勝なんて達成した暁には、お祭り騒ぎとなるだろう。
しかし忘れてはならない。それはまだ「創造」の時期にあるからだと。そして、ファーガソンのように何十年も「安定」させてくれる監督は金では買えないという事も。