その上で、1トップのポジションを争うコルドバと武藤ではプレースタイルに良い意味での違いがある。コルドバは主に中央でボールを受け、より直線的にゴールに向かうのに対し、武藤はサイドに開いて攻撃の起点を作ったり、相手サイドバックの裏のスペースを狙う。どちらが出場しているかによって攻撃パターンを変化させる事が可能なため、双方ともにチームへの貢献度はかなり高いレベルにあるのだ。
実際、コルドバが1トップのレギュラーとして定着しているが、武藤はリーグ戦でも途中出場から2得点を挙げている。そして、コルドバも武藤の強烈なアピールに刺激を受け、ここまでヨーロッパリーグでグループ首位という結果を残しながら、並行しているリーグでも9位というまずまずの順位につけているチームに貢献している。
共に24歳と23歳という同世代の選手による高いレベルでの競争がお互いを刺激して切磋琢磨する姿は、チーム全体の大きな推進力となっているのだ。
ドイツサッカー界の”良心クラブ”マインツ
現在は1トップとしては2番手の武藤だが、彼は慶應義塾大学を卒業した半年後にドイツへ飛び立っている。2014年シーズンに大学生Jリーガーの立場ながら台頭し、そのまま日本代表にも選出。2015年1月のアジアカップにも参戦し、その半年後にマインツへ移籍。ドイツの地でも印象的な活躍を見せ続け、その2年近くを走り続けて来たのだ。
いくらハードワーカーとはいえ、長期離脱が“良い休養”となる可能性もある。そして、その離脱期間でドイツ語をしっかりとマスターした事をシュミット監督に高く評価されている。また、コルドバとの2トップや武藤のサイド・トップ下起用での共存も十二分にありえる。
そんな武藤とコルドバのハイレベルな競争を観ていると、毎年のように有力選手を引き抜かれながらも無名の若手タレントを発掘し続けて1部リーグに定着する。最近では上位にも食い込んで来るシーズンを過ごすマインツ、というドイツサッカー界の「良心」クラブの歴史を見ているようだ。
そもそも武藤も日本代表FW岡崎慎司をイングランドのレスター・シティに売却した移籍金で獲得した選手。武藤やコルドバも何れは同じように移籍金を残してステップアップ移籍を果たすのだろう。