目次
【マッチレポート】
キックオフからジュビロはアウェイながら主導権を握って攻勢を仕掛けました。CBコンビがボランチもできる藤田義明と伊野波である事からも理解できるように、最終ラインからもしっかりとパスを繋ぐ意識を浸透させたい意向が感じられました。しかし、ガンバ同様に多額の移籍金を払って獲得した日本代表DF伊野波はビルドアップでのミスが多く、ロングフィードにも精度はもちろん弾道の遅さを観てもセンスを感じさせるモノはありませんでした。昨季J1で残留争いをする前にあっさり降格してしまう中でも先発メンバーから外されたり、ポジションがCBやボランチと定まらなかったりでフィットしきれない状態は今も続いているように見受けました。
試合の方は24分、ジュビロは右サイドでワイドで受けたぺク・ソンドンがドリブルで中へキープしてタメを入れながら外側を追い越した駒野を使ったシンプルながらスピーディなサイド攻撃から駒野のピンポイントクロスがニアサイドでマークを外した前田へ。難なく頭で押し込んで先制。0-1。
そして、監督交代で揺れている部分もあった京都のメンタル面を突いて即座に追加点も手にします。
28分、右CKからファーサイドで藤田が競ったボールはゴール前至近距離への鋭い折り返しとなり、京都DFがオウンゴール。0−2。
しかし、ここで課題がまた失点という目に見える形で露呈。
32分、自陣低い位置で伊野波がCBパートナー藤田への不必要で不用意なパス。受けた藤田が山瀬に奪われ、そのままシュートを許し、そのシュートに対して伊野波は準備不足もあってクリアミスでボールはゴールへ。1−2。山瀬のゴールとなったものの、記録だけでなく、得点直後という時間帯含めて失点経緯すべてがオウンゴールという軽率なミスがCBコンビ双方が起こすという部分にJ2降格へ至った負の要素を感じました。
それでもこの日のジュビロからはあくまでもサイド攻撃の重要性を語るように、右サイドからの鋭い攻撃でFKを獲得し、43分にMF小林裕希の左足でのキックからファーサイドで前田が巧みに押し込むヘッドを決め、前半を1−3折り返しました。
後半に入り、選手交代と配置転換により、開始早々に左サイドで受けた京都・MF山瀬がまだまだ代表クラスを感じさせる縦への推進力溢れるドリブルからスピードに乗りながら超絶左足クロスを、ゴール前でマークを振り切った元ガンバのエースFW大黒将志へ合わせて2−3。ジュビロからすればDFのマークがキックオフ直後だった事もあってルーズだった事を反省すべきでしたが、山瀬と大黒の個の能力の高さを称えるべき得点でもありました。
以降の試合の進行はやや京都ペースになったものの、最終的には京都にシュートを5本しか打たせなかった守備は評価に値すると思います。特に試合終了間際に大黒に抜け出されながらも、W杯準決勝のオランダ戦でアルゼンチンのマスチェラーノがロッベンに抜け出されながらも渾身のスライディングタックルで失点を防ぐプレーに近い伊野波の失点回避のファインプレーは鳥肌モノでした。
逆に攻撃面では山田の後半途中からの投入とい豪華メンバーの起用法という選択肢やぺクが脚を攣るぐらいに動き回ってはドリブルで仕掛けまくって鋭いシュートを連発するものの、シュートは8本に留まるというのは課題でしょうか!?それでも山田のジュビロ最終戦を観れたのはニュートラルなサッカーファンとしては満足でした、と言って試合詳報を締めましょう。
「選手の特徴を活かしたスピーディーなサイド攻撃の分厚さ〜1年前のガンバとの共通、相違する課題と収穫」
ポゼッションサッカーとしては機能しなかったものの、駒野がいる右サイドでの分厚いサイド攻撃は、エリア内でクロスに合わせる技術では日本人トップと言えるFW前田の特徴とも相性抜群。ガンバ同様にJ1昇格後にも主導権を握れるか分からないため、ポゼッションよりもサイド攻撃とクロスに分厚さとスピード、迫力を見せている事に”J1仕様のチーム作り”を意識している点に好感が持てました。
駒野のいる右サイドは先制点に代表されるように、サイドMFとの連携によるシンプルながら確実性の高いサイド攻撃、左サイドでは左SB宮崎智彦がガンバで例えると下平匠のようにキック精度に特徴がある事と、山田や山崎といった右利きのサイドMFを活かしてサイド起点のビルドアップから組み立てながらドリブルやワンツーから切れ込みや宮崎のアーリークロスなど、両サイドで違う手法を使ったサイド攻撃のパターンも良い特徴だと感じました。
また、ジュビロは左SBを固定できずに苦しみ、今季は鹿島アントラーズへ移籍した山本脩斗の流出と共に宮崎がレギュラーに定着しているようですが、この日訪れたアウェイ側ゴール裏に宮崎のユニフォームを着ていたサポーターが多かったのもサイド攻撃をチームの武器としてサポーターも捉えているのかなと思った次第です。
惰性のポゼッションサッカーと個に頼ったカウンターでJ2を”優勝してしまった”昨季のガンバとは違った現実を直視したベースの構築は今季序盤戦での不振からしっかりと軌道修正できた要因となっているのではないでしょうか!?
「J2降格の最大の敗因=リーダーの不在〜松井が”ルマンのソレイユ”から”磐田の太陽”へ」
ただし最も大事な安定したプレーを引き出すための精神的支柱となるリーダーが不在な点がJ2降格を招いたように見受けました。代表経験豊富な前田、駒野の重鎮は自ら周囲を鼓舞するような積極的に声を出すタイプではなく、伊野波は加入1年半でもチームにフィットできなかったり、ポジションが定まらないので自分の事で精一杯という状況は今も変わらず。山田が若くしてキャプテンマークを任されて失敗に終わったものの、彼が主将を担うのは自然な流れであったように思えます。
そんなリーダー不在のチームに今季から10年ぶりにJリーグへ復帰したMF松井がいきなりの主将就任。つまり、クラブもリーダー不在を感じていたからこその人選なわけですが、豊富な欧州リーグや日本代表での経験だけでなく、冗談好きで関西出身の松井が明るい雰囲気をもたらし、フランスリーグ在籍時代は”ルマンのソレイユ(太陽)”と言われた彼が”磐田の太陽”となる事で徐々にチームはまとまりつつあるようですが、この日の2点リードの直後に失点を喫する部分などはメンタル面での課題も感じさせます。
正直言って、現在の松井は全盛期から衰えも感じますし、まだジュビロに今後ずっといる事もないだろう事も予測されるだけに、彼がいる間に司令塔となるMF小林裕希あたりがもっとリーダーシップを発揮できれば良いと思うのですが・・・・。そもそもボランチが補強ポイントのようにも感じるので、新外国人チンガにも負けずに小林がポジション争いだけでなく、新主将として来季J1で迎えられるぐらいの活躍を見せる事がJ1昇格後の躍進に繋がるのではないかと思います。
以上、1年前のガンバと共通する課題もあるものの、ジュビロの方が現実を観ていると感じましたが、ジュビロサポーターの方にコレを読んでいただきたいのですが、いかがでしょうか!?