たしかにエンリケは結果を残せずにローマを去った。
しかし彼は2つのことを実践した。
一つはイタリアサッカーの「否定」だ。
いや「無視」といったほうが正確かもしれないが、カテナチオという1-0で勝つことが美学とされる伝統的文化の真逆を行くような超攻撃的なやり方をとにかく実践した。
これはいわば荒治療であるが、54失点しても、勝てなくてもとにかく攻撃を続けた。攻めることを是とした。
もうひとつはロッカールームのボスとの対決だった。
フランチェスコ・トッティ、「王子」はローマの歴代の監督の悩みの種であった。
彼と対決するか、妥協するかは監督がまず検討しなければならない。
しかしエンリケはこの腫れ物にまさしく堂々と向き合った。
彼がバルサのカンテラからやってきたからには、特定の選手を特別扱いはできない。
戦術的にもそういった特定のリーダーはいらない。
ガルシア監督はここにもう一度守備の立て直しをはかり、バランスがとれ、見事昨シーズン2位で終わったのも、エンリケが行った2つの付け焼刃的な行為が意味をもったと思う。
私がエンリケがローマが本質的に変わる事になったきっかけとなったというのはそういう意味だ。
ローマは長いこと欧州の舞台から離れていたから、ローマがCLで大きな結果を残すことは難しい。
しかしCSCKに大勝し、シティ戦ではトッティが最年長得点記録を更新し、アウエーでも1-1で終えることができた。
ローマには自信があった。
ただベップはローマに対して特別な準備をしていた。
ロッペンを低い位置に起き、ローマの警戒を解いた。
しかし9分、ロッペンがエリア内に侵入し、アシュリー・コールをかわして左足で角度があるにも関わらず、見事にゴールを決めた。
ゲッチェ、レバンドフスキ、リベリ、シャキリ、どの得点も素晴らしかった。