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王者・サンフレッチェ広島戦力分析〜「3通りの組み合わせがある」【前線編】

王者・サンフレッチェ広島、戦力分析「3通りの組み合わせがある」【前線編】

昨季は全34試合でリーグ最多の73得点、リーグ最少の30失点。絶対的な強さを見せて、2005年のJ1リーグ18チーム制移行後の最多勝点74を記録し、明治安田生命Jリーグチャンピオンシップも制したサンフレッチェ広島。直近4シーズンで3度目のリーグ優勝を果たした広島だったが、今季は開幕からやや躓いた。

ただ、やっとAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)のグループリーグ第3戦でタイリーグ王者のブリーラム・ユナイテッドに3-0と完勝。それも前線には21~23歳の若手3人が起用されての勝利だった。続く明治安田生命J1リーグ第1S第4節でも大宮アルディージャにアウェイで1-5と大勝。、広島には「2チーム分の戦力がある」のを証明した2試合だった。

そんなリーグ王者・広島を戦力的な観点から分析してみたい。

「2チーム分の戦力」を証明したクラブW杯

今季を迎えるにあたって、広島は昨季チーム最多のリーグ21得点を記録したブラジル人FWドウグラス(現・アルアイン/UAE)が退団したものの、その他の主力選手はもちろん、バックアップメンバーもチームに残留した。何より、昨年の12月中旬に日本で開催されたFIFAクラブW杯に置いて、3度も前の試合から6名の先発メンバーを替えて挑んだ上で、”世界3位”の座を掴んだ。その経験が若手やバックアップの選手の充実ぶりを感じさせていた。それが上記した「2チーム分の戦力」だ。

その上でドウグラスが抜けた前線には清水エスパルスから昨季J1で9得点の元ナイジェリア代表FWピーター・ウタカ、プラチナ世代のエース格だった京都サンガのFW宮吉拓実を獲得。チームの一体感を高めていたベテランMF山岸智が退団したが、同じサイドアタッカーにはモンディオ山形で強いインパクトを放っていたMFキム・ボムヨンが加入。これにより、昨季は出場していないACLに参加する上で選手層はより分厚くなった。

そして、実際に2月20日に前年度のJ1リーグと天皇杯の王者同士が激突するフジ・ゼロックス・スーパーカップからシーズンが始まり、見事にこの試合でガンバ大阪を3-1と下して今季最初のタイトルを獲得。しかし、その後はACL2試合とJ1開幕戦で3連敗を喫してしまい、その後のJ1リーグ2試合も引き分け続き。昨季のリーグ王者が公式戦5試合未勝利(2分3敗)スタートとなってしまった。

ただし、Jリーグ最優秀監督賞を史上最多タイの3度受賞している森保一監督は、昨季辺りから常々、「我々には2チーム分の戦力がある」と言ってのけ、今季も開幕から試合ごとに大幅な先発メンバーの入れ替えを行っている。未勝利が続いていた5試合でも、20人の選手が先発起用されていた。(ちなみにトップチーム契約選手は全30選手)

「3通りの組み合わせがある」前線の充実ぶり

特にドウグラスが抜けた前線のテーマは2つ。まずは、ドウグラスとはやや違った特徴を持つウタカをどのポジションで起用するのか?ジョーカー起用で強烈なボレー弾を決めたゼロックス杯からはシャドーでプレーして来たが、1トップでプレーさせる事も多い。スピードがあって推進力もあったドウグラスとは違って、ウタカは柔軟なパスで変化をつけるなど周囲を活かすタイプ。J1第2節の名古屋グランパス戦でエースFW佐藤寿人がJ1通算最多記録となる158得点目は、そのウタカが左サイドのバイタル付近で受け、逆サイドから入って来た右ウイングバックのミカエル・ミキッチを使った柔らかい浮き球パスから生まれた。見事な連携の連続から生まれたゴールからは、ウタカの可能性の大きさを感じさせた。昨季はやや”個”に頼る攻撃も多かったが、今季はウタカの加入でフリックやワンタッチパスを多用した従来のスタイルに回帰しそうだ。

そして、今年初頭にU23日本代表としてU23アジア選手権決勝で2ゴールを挙げ、リオディジャネイロ五輪出場権の獲得に成功し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのFW浅野拓磨をどう位置付けるか?昨季はリーグ8ゴールを挙げてJリーグのベストヤングプレーヤー賞に輝いたが、リーグ戦での先発は開幕当初の僅か2試合だった。60分前後で佐藤と交代してピッチに登場し、自慢の快速で相手チームの守備陣に脅威を与え続けて来たが、実際は先発としては未熟でもあった。そんな浅野がクラブW杯や天皇杯では先発起用されて結果を残して来た。ただ、それが1トップではなくシャドーでの先発起用だったのも事実で、ドウグラスの退団を見越しての森保監督の起用法だったのか?とも勘ぐれる。ただ、シャドーとしてはウタカが定着しそうな気配がある中、ここへ来て浅野が先発の1トップに抜擢されての公式戦連勝を飾ったのは大きな進化。今後も浅野の起用法に注目だ。

ブリーラム戦での初勝利では、浅野の1トップをクラブW杯での負傷から復帰した野津田岳人と、不退転の決意による移籍で加入した宮吉がサポートする2シャドーによるトリオ編成で躍動した。21歳~23歳のこのトリオが与えたインパクトも大きい。

「2チーム分の戦力」と共に、「前線には3通りの組み合わせがある」という森保監督の言葉通り、ここまで1トップ2シャドーで先発起用された選手は、佐藤・浅野・皆川佑介・柴崎晃誠・茶島雄介・ウタカ・野津田・宮吉と8人おり、離脱中の森崎浩司を含めると9人いる。確かに「2チーム分の戦力」と前線には「3通りの組み合わせ」があるのだ。