ロシアでも飲める“獅子のビール”
◇◇◇◇◇
オリ川とウラル川の合流点に要塞を築き「オリ川の城」と命名されたオレンブルク。ロシアと中央アジアとの間で交易が盛んになり発展した都市からカザフスタンとの国境までは百キロメートル。都市名にドイツ語を好んだのはピョートル大帝。ドイツと同じくブルクが国内各地に点在する。最も知られているのは自身の名を冠したサンクトペテルブルク。
◇◇◇◇◇

◆◆◆◆◆
そこで並べた写真はロシアとドイツの銘柄。ORコードの横にロシア語印字の『レーベンブロイ』。サンクトペテルブルクに本社屋を構えるロシア最大のビールメーカー『バルティカ』を国外で入手するのは少々面倒なのに比べ、何処でも飲めるライオンのパッケージ。現在日本で販売されているのは韓国産。アンハイザー·ブッシュ(AB)·インベブがロシア·ウクライナ市場向けに現地法人SUN InBevを設立したのは1999年。2005年以来ロシアでもレーベンブロイが生産·流通していた。広大な国土の隅々に向けて九都市の工場が稼働。オレンブルクで手に入れた瓶·缶ならば西のヴォルシスキーか東のオムスクで醸造されたものだろうか。
◇◇◇◇◇

◆◆◆◆◆
そのABインベブの経営陣もウクライナ侵攻直後の昨年三月ロシア事業からの収益放棄を決断、’18年に合併したトルコ企業アナドル・エフェスに株式を売却している。UEFAチャンピオンズリーグ公式スポンサーの『ハイネケン』も同時期、撤退を表明すると一昨年の夏全資産をロシア企業にほぼ無償で譲渡している。
◇◇◇◇◇

◆◆◆◆◆
1970年に創設されたFKオレンブルクは、2016-17シーズンにロシア·プレミアリーグに初昇格した新興クラブ。写真は’19年に撮影した右サイドバックのアンドレイ·マリフ:Andrey Malykh【1988年8月24日生】。昨季まで在籍したオレンブルクに別れを告げ今季からは生まれ故郷のクラブ、ディナモ·キ-ロフへと帰還。2009年にオレンブルクへの移籍してから三百九十五試合に出場したチ-ムの顔だった。十七年ぶりとなる古巣のユニフォ-ムに袖を通したからスパイクを脱ぐ日も遠くはない。
◇◇◇◇◇
風と共に去り行く 異邦人の指揮官たち
◇◇◇◇◇
第88話は2002年竣工のガゾヴィク·スタジアム。2014年か’16年にかけての改装工事で屋根が付き、収容一万人全てが濡れずに観戦できるように。現在の監督はイルダール·アフメツィアノフ:Ildar Akhmetzyanov【1983年11月25日生】。タタールスタン共和国ニジネカムスク出身。ロシア人がこのクラブの指揮を執るのは随分久しぶり。開幕時はウラジーミル·スリシュコヴィッチ:Vladimir Sliskovic【1983年2月20日生】。この人はボスニア·ヘルツェゴビナとフランスの二重国籍。ロシアのウクライナ侵攻を理由にUEFAヨーロッパリーグの出場権を失ったロシアカップ王者のスパルタク·モスクワ。スペイン人監督とともにチ-ムを指導したスリシュコヴィッチの評価は高く、突如の解任劇で4月17日に行われるロシアカップ準決勝第二戦で急遽指揮を任される羽目に。ゼニト戦はドロ-決着で初戦を落としていた為、連覇は成らず。しかしロストフ戦、ロコモティブモスクワにリ-グ戦は連勝したことで四月の月間最優秀コ-チにも選ばれており中々の辣腕。’23-24シ-ズンに迎えた新監督はイジー·ヤロシーク:Jiří Jarošík【1977年10月27日生】。2006-07シーズンにはセルティックで日本代表のナンバ-10と同じ釜の飯を食した元チェコ代表。オストラヴァ出身の前任者に続いてのチェコ人だったが不振で早々の解任。後釜に収まったのはベラルーシのソリゴルスクでユースを指導していたスペイン人のダビッド·デオグラシア:David Deogracia【1973年2月21日生】。こちらも一年で解任されてしまったから、三年連続でシ-ズン途中での監督交代が恒例なのは頭が痛いところ。
◇◇◇◇◇