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その右の坊主頭はこの試合要注意人物として、筆者が最も警戒していたミロスラフ·ストッフ:Miroslav Stoch【1989年10月19日生】。チェルシーFCから貸し出されたウインガ-。2012年にはコーナーキックからのボールをエリア外からダイレクトボレーで豪快に決めてFIFAプシュカシュ賞を受賞している。このアヤックス戦の前のデ·フロルーシュ·フェステでの試合でも開始5分見事な長期距離砲を披露してFCフローニンゲンを粉砕。’09年に19歳で招集されたスロバキア代表ではこれまで60試合に出場。2019年のUEFA欧州選手権予選で事実上代表は引退。昨季はチェコの三部でプレーしているから現役を続行するのか去就が注目されるところ。
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エンスヘデの花火保管倉庫で起きた大規模な爆発事故。消防士四人を含め死者は23人名、負傷者は千名。高さ85mまで立ち上がる漆黒のキノコ雲は最早爆撃の様相。経営陣が逮捕されたSE社は中国から輸入した爆竹をイベント会社に販売していた企業。当時この報道を耳にしてUEFA欧州選手権の開会式に使用する花火だと勝手に決めつけていた。
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中国の火薬を欧州に持ち帰ったのは“東方見聞録”のマルコ·ポーロ:Marco Polo【1254年9月15日生‐1324年1月8日没】と思っている方も多いはず。確かにフビライ宮廷で欧州人としては最も花火を見ていたから彼が花火流行の火付け役だったかもしれない。しかし英国のロジャー·ベーコン:Roger Bacon【1220年生-1292年没】が火薬造りに成功している。16世紀には種子島に鉄砲伝来。火薬が日本に伝わる頃、既に英国ではエリザベス一世が祝祭や儀式で花火を使用していた。日本で花火観賞が根付くのは江戸時代からだから暫く後。
2009ー10シーズンのエールディビジ終盤は、大量得点で白星を積み重ね詰め寄るアヤックス。それでもFCトゥウェンテは失速すること無く見事逃げ切りに成功。悲願のリーグ初優勝を達成。そして初となるUEFAチャンピオンズリーグ本選出場の権利も手にした。
ところが2015年に発覚した負債総額は9500万ユーロ。’16年には財政難を理由に違反行為が重なり勝ち点とライセンス剥奪の危機に瀕した。地方小都市のクラブには身分不相応のスタジアムとデ·フロルーシュ·フェステも批判に晒されたのもこの頃。
2017-18シーズンは最下位で降格。八年前の栄光は一瞬の打ち上げ花火だったかと思われた。するとエンスケーデ市議会が1,400万ユーロを支援。公的資金投入で財政再建へ。僅か1シーズンでエールディビジに復帰すると新加入の中村敬斗:Keito Nakamura【2000年7月28日生】の開幕戦ゴールが日本でも話題となる。
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カバ-写真は2022-23シーズン最終節のアヤックス戦スタメン表。三枚替えで交代出場の背番号9はリッキー·ファン·ヴォルフスウィンケル:【1989年1月27日生】。
今季新主将に任命された35歳はFCトゥエンテでの過去四シーズンで118試合に出場し42ゴールを記録している。
再び時計の針を戻し2009年12月6日エールディビジ16節。三位アヤックスは五位のユトレヒトに足を掬われる。17節以降残り18試合を16勝2分。最後は14連勝で着地しているだけに、この取り零しさえなければと悔やまれる試合でユトレヒトの9番を着けていたのもヴォルフスウィンケルだった。このシーズンの実績が評価され、FIFAワ-ルド杯終了後にはオランダ代表でA代表デビュ-も果たしている。
さて、昨季三位のFCトゥエンテは、UEFAチャンピオンズリーグ予選3回戦の初戦を本日迎える。川村拓夢:Takumu Kawamura【1999年8月28日生】加入のFCレッドブル·ザルツブルクとの対戦。ヴォルフ·ガングアマデウス·モーツアルト:Wolfgang Amadeus Mozart【1756年1月27日生-1791年12月5日没】
を育んだ音楽の都は、新年を迎えると打ち上げ花火の爆音と鐘の音が鳴り響く。白馬と赤牛が火花を散らすキックオフのホイッスルは間もなく吹かれる。[第159話了]