浦和のJ1ファーストステージ優勝がかかった清水との第15節。優勝の歓喜を待つサポーターの中に別の目を持つ男たちがいた。彼らは浦和の若い才能の視察に訪れたのだが、その光景に違和感を覚えたのは私だけだろうか。
☆早くなった海外の目
現在浦和で活躍を続けるMF関根貴大(20)は、ユース時代から注目されていた快速ドリブラーだ。最近は右ウイングバックとしてスタメン出場が続いており、このまま成長すれば面白い逸材になるかもしれないと期待を寄せていた。
そんな折、J1第15節清水戦のスタンドにはブンデスリーガ1部・ボルシアMGのスカウトと共に元浦和監督のゲルト・エンゲルス氏の姿があった。彼らは浦和のファーストステージ優勝を見に来たのではなく、関根という原石を日本まで視察に訪れたのだ。
若い日本人選手が世界から関心を持たれるのは嬉しい限りだが、少し動きが早すぎやしないだろうか。関根は昨季にトップチーム昇格を果たしたばかりで、スタメンに定着したのも今季の第4節あたりからだ。
世代別の代表には何度も呼ばれているが、A代表への招集は1度も無い。そんな20歳のドリブラーにブンデスリーガの強豪が目を付けたのである。これは異例の動きだ。
数日前には京都サンガF.Cに所属するMF奥川雅也(19)をオーストリア1部リーグ・ザルツブルクが獲得したとの発表もあった。ザルツブルクはアジアを中心にマーケットを拡大しており、U-22日本代表の南野も所属するオーストリアNo1クラブだ。
奥川は一旦2部のリーフェリングにレンタルされる予定だが、そこで結果を残せばオーストリア王者のザルツブルクの一員としてELなどへの出場も見えてくる。
仮に関根がボルシアMGに移籍した場合、奥川同様にレンタル先で修業を積む事になるだろう。ボルシアMGは今季を3位でフィニッシュした強豪であり、易々と定位置を確保できるような甘いクラブでは無い。
ただ、これは世界で言う青田買いに近い。欧州ではもっと若い世代の青田買いが頻繁におこなわれているが、サッカー後進国として捉えられている日本では20歳程度の選手は青田買いの部類に入る。
実際にこれまで海外への挑戦権を得た日本人選手の経歴を振り返ると、通常は日本代表としてワールドカップなどの国際大会に出場し、そこでスカウトの目に留まった者がリストアップされる流れだった。
長友の例でいえば2010ワールドカップでの活躍がスカウトの目に留まり、セリエAのチェゼーナからオファーがあった。彼はそれまでもFC東京で左サイドバックの定位置を確保し、U-22代表として北京五輪まで戦った。それでも世界から注目される事はなかった。
やはり今回の奥川のザルツブルク移籍、関根の視察、そして武藤のマインツ移籍は異例の流れといえる。武藤はまだしも、奥川と関根は即戦力としてではなく、2,3年後の成長を期待しての獲得だ。これは日本人のポテンシャルが認められてきた証と考えていいだろう。