そのため、リオ五輪でもドイツのブンデスリーガ1部の強豪で主力を張るレオン・ゴレツカやマックス・マイヤー、ユリアン・ブラントが招集された2列目にグナブリーのポジションはなかった。
それでも初戦の前半でゴレツカが負傷してチームに動揺が生まれた中で急遽出場すると、前回大会金メダルのメキシコ相手に1得点。続く、前回大会銅メダルの韓国相手にも終了間際に直接フリーキックを蹴り込むなど2得点。ポジションを掴むどころか、それ以降も多くの得点に絡み、ドイツ代表を越えて「大会の顔」となる大活躍を続け、得点王にまで輝いた。
アーセナルファンでもある筆者の見識から言わせてもらうと、リオ五輪を機にグナブリーに変化が見られるのは1つ。それは守備意識ではなく、攻撃時に相手DFラインの裏を狙う意識。これまでは相手DFの間など足下でパスを受けたがる傾向が強かったため、相手チームに失点の恐怖を与えきれず、自身の得点もイメージより相当少なかった。そんな彼が味方のスルーパスを呼び込むように裏に抜け出す動きを多用する事で、相手が裏やシュートを警戒する。それが逆に必然的に動き直して足下にパスをもらえる機会も増えた事で、彼の特徴を余す事なく披露できている要因だと考えられる。
ボールを持たせれば世界屈指のレベルが期待できる。それゆえにリオ五輪のメンバーに実績が乏しくても招集されたはず。それだけに、パスの受け方に工夫を見出したグナブリー。守備意識は未だに低い傾向はあるが、ぐうの音も出ないほどの結果を示す事で周囲を認めさせるのも一流選手の証明。
そして、リオ五輪後となる今夏の移籍市場期限ギリギリで、グナブリーはドイツのブレーメンに完全移籍を果たした。しかもこの移籍劇には、リオ五輪での鮮烈な活躍により、「バイエルン・ミュンヘンが完全移籍で獲得し、ブレーメンへはレンタル移籍する形になる」や、「ブレーメンがアーセナルに払った移籍金をバイエルンが肩代わりしている」との報道も出ている。真相は分からないが、それだけの活躍をグナブリーは披露したし、現在もしている。
開幕直後は連敗続きで苦しみ、監督交代も起きた古豪ブレーメンだが、グナブリーはすでに7試合で3得点を挙げる活躍を見せ、遂にトップカテゴリーでブレイクしようとしている。
筆者からすれば、アーセナルで活躍する姿を観たかったが、それでも彼がチームの主軸としてプレーしている姿は嬉しく思う。ブレーメンのユニフォームを着てプレーする彼を観ても、改めて凄い選手だと思う。
近い将来、彼は再びビッグクラブでプレーする選手となるだろう。それとも、エジルを筆頭に偉大な2列目の選手を輩出して来たブレーメンでレジェンド的存在となるか?何れにしろ、彼は本当に凄い選手だ。日本のサッカーファンの間でももっと取り上げて欲しい。