126〗Alphamega Stadium / リマソ-ル

世界最大のロシアと欧州七番目の小国の奇妙な関係

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人口八十万人に満たない地中海の海洋国家キプロス。EU加盟国最東で面積は四国の半分。小さ国を順に数えるならば、バチカン、モナコ、サンマリノ、リヒテンシュタイン、マルタ、アンドラに次いで欧州七番目。税制優遇措置をアピールして厳寒の地で暮らすロシアのオリガルヒなど海外富裕層の預金をごっそり取り込んだ。クレオパトラ:Cleopatra【紀元前69年生-紀元前30年没】を魅了した世界最古の貴腐ワイン=コマンダリアだけでない。他にもキプロス土着品種のワインが味わえる。ギリシャ系住民の約八割が正教を信仰するキプロスと正教文化主義のロシア。更にトルコと長く対立してきた歴史から同じくトルコと反目するキプロスへの手厚い支援を厭わない北の大国。ロシアの国土には千八百ぐらいのキプロス島が収まる。
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筆者が二十代の頃に訪問した台北で、日本語が話せる高齢者達との出逢いがあった。日本が統治した1895〜1945年に教育を受けた世代である。深刻な経済状況の旧ソ連諸国から、欧州西側各国へ移住する人が後を絶たなかったのが’90年代。この中にはキプロスを選択する人々が結構いたようだ。二年前のキプロス滞在時に、まず驚かされたのはロシア語表記に代表されるロシア文化の浸食。そして明らかに見た目はキプロス人なのにロシア語で会話をしている自分と同世代のオヤジ達とも出会った。ソ連崩壊以前から語学や芸術、またテクノロジー分野の学位取得のため、モスクワ大学やサンクトペテルブルク国立大学で留学していたそうで、同時期「自分はバレエの短期留学に付き添ってソ連とロシアを度々訪問してました。」と話したからと距離が縮まった。かつてロシアは両国の歴史と経済面での強い結びつきから留学先として高い人気を誇っていたのである。そして現在キプロス在住者を遥かに凌ぐキプロス出身者が欧州だけでなく北米や豪州、南アフリカなどの英語圏で暮らしている。
現在APOELニコシアでプレーする元キプロス代表のストライカー
ピエロス·ソティリウ:Pieros Sotiriou:【1993年1月13日生】も’22年から日本での生活を経験。ルヴァン杯決勝での同点&逆転弾でその名前を知った。「ピエロス 日本でどう?」と声を掛けられたから取り敢えず笑顔で親指を立てたが、そのプレーを見ておらず社交辞令。
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バルセロナやヴェネツィア 日本だけではないジェントリフィケーション

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リゾート不動産物件売却も好調だった少々前のキプロス。潤った財政の恩をフットボールクラブを被る。それが2020年から二重課税防止条約が実施されたことで投資優位性は急落、それまで租税回避地としてキプロスを利用をしていたロシアの資産は中東ドバイなど他の地域へと流れ出す。それでも問題視されていたのが流入してきた富裕層や中産階級によって地域の高級化現象=ジェントリフィケーション。再開発により都市が活性化した渋谷や観光客を対象にした結果住民が圧迫された京都など日本でも見られるこの状況がリマソ-ルでも。高騰した家賃はキプロス人を都心部から追いやり外国人居住者が占拠する。いきなり家賃が倍に跳ね上がれば退去せざるを得ない。リマソールの家賃は今やEU圏内の大都市と肩を並べる程に。それに比べ所得は半分から1/3倍レベルと推察される。
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そして問題なのはギリシャ語も英語も話さず、キプロスの文化に溶け込もうとしないスラブの民。大企業はロシア人を優遇して雇用するから、社内ではギリシャ語、英語だけでなくロシア語までが必須に。そもそも子ども達の教育からしてロシア人教師がロシアのカリキュラムで教えており、キプロスの歴史や言語は省かれている。これではキプロスの社会から孤立したとしても仕方ない。統計によると約二十万人が暮らすリマソール都市圏でロシア語の会話できる人が五万人程度まで増えているのだとか。今では首都ニコシアの方が住みやすいと転居するケ-スも珍しくない。
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古代ギリシャとオリエントの交叉する島が迎えるウクライナの民

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さて、やたら長いここまでが前置き。侵攻を逃れてリマソールに避難してきたのがウクライナ人。本年一月末の段階で受入人数: 約 二万四千二百三十人が一時保護の名目で滞在中。この数字がどれ程すごかというと人口比率:キプロス住民、千人に対して24.7人となるのだがEU加盟国で第四位 一位は1968年のソ連主導の軍事介入=プラハの春を経験しているから、旧ソ連現ロシアへの怒りが猛るチェコ。二位ポーランドと三位スロバキアは国境が接してるお隣さん。そしてドイツやハンガリーではなくキプロス。理由は明白。ロシア語とウクライナ語は六割程度しか共通していないが、ウクライナ人の多くがロシア語を理解できるし、特にロシアに近い南部キーウでは普通にロシア語で会話がされていたから、もしかするとウクライナ語よりロシア語のほうが通じるのかもしれないと思った程。ウクライナの美しいお嬢さんは大歓迎だが、いくら日本の治安がよく日本人が親切でも言葉の障害はやはり大きい。
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