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最後の写真はルスで上空を舞うアギア·ヴィトーリア=鷹。このスタジアムでは試合開始前のセレモニーではお馴染みの光景ではあるが、スッカリ頭から抜け落ちていた。慌ててレンズを向けたから、こんなピントの甘い写真に。世界の名だたる快速ウインガ-をフレ-ムに収めて多少自信があったのだが、本家の鷹の翼は、日頃目にするカラスや鳩とは比べものにならない閃光を思わせる速さ。映画『リスボンに誘われて』は、サラザール独裁政権下に生きた若き革命家たちの物語である。大航海時代に植民地化したアンゴラとモザンビークではソ連·キューバに支援された独立革命軍との戦争が続いていたが、1974年リスボンでの無血革命により独裁政権は崩壊した。翌75年両国の独立を理由に、国境を下り南アフリカへと移住を余儀なくされたポルトガル人達が存在した史実を、ポルトガル代表を鼓舞する子孫から学んだのが南アフリカ大会だった。飛翔するその姿が還暦を過ぎた耄碌爺の脳内にまるで新鮮な空気を注入するかのように十五年前の真っ赤な記憶を鮮やかに蘇らせてくれたのである。〖第九十九話了〗
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⏹️撮影/テキスト:横澤悦孝 ⏹️モデル:佐倉菜奈