☆ペップが3バックに固執する理由
試合によってコロコロとシステムを変えるのがペップ流だが、ヴォルフスブルク戦の翌週に行われたシャルケとの一戦でもシステムをいじってきた。4−1−4−1から3−4−2−1に変更し、CBを増やす決断を下したのだ。いつもは意図が読み取りにくいペップの判断だが、この日は分かりやすすぎた。
ペップは先週のヴォルフスブルク戦に敗れた事で、カウンターに備えるDFが必要と考えた。ボアテングとダンテの2枚ではカウンター時に脆くなると考え、シャルケ戦では右からベナティア、ボアテング、アラバと3バックをチョイスしたのだ。
ペップはバルサ時代にも3バックを試しており、狙いはCBを増やすことによる守備の安定化だ。しかし左のCBにはダンテではなく、SBか中盤を本職とするアラバを置いた。カウンター時のスピード対策だったのかもしれないし、3バックになっても攻撃的姿勢は変えないというペップの主張だったのかもしれない。
ところが、この日もバイエルンの出足は遅かった。シャルケにプレスをかわされ、試合序盤にも集中力の切れたようなプレーから危ない場面を作られている。そして事態は最悪な方向へ向かった。シャルケのDFラインから出されたロングボールをアラバとシャルケFWが競りに行き、アラバと接触。
体の小さいアラバは倒れ、抜け出したシャルケのシドニー・サムを止めようとしたボアテングが決定機阻止の判定で一発退場を喰らうハメとなった。スピード、そしてビルドアップを強化するためCBに抜擢されたアラバが、当初より欠点と思われたフィジカルで競り負けてしまったのだ。
ネガティブな部分ばかりが出てしまい、バイエルンとしては非常に不運だった。結果的にはペップの3−4−2−1が裏目に出た事になる。何より興味深かったのは、ボアテング退場後のペップの対応である。
ペップは前半早々にゲッツェをベンチに下げ、CBのダンテを投入した。ボアテングは退場したものの、あくまでも3バックを継続したかったのだろう。3−4−1−1にシフトチェンジしたのだ。いかにペップがカウンターに気を遣っていたかがうかがえる。
正直シャルケのカウンターはヴォルフスブルクよりも格段に質の劣るものだったが、結局バイエルンはシャルケと引き分けてしまった。
しかし、大切なのはこの2試合でバイエルンが勝ち点1しか取れなかった事ではない。問題は今後の戦い方にある。バイエルンが国内リーグを制するのは決定的だが、目標とするCL優勝には今回の試合で出た課題を修正していかなければならない。
バイエルンの強さや組織力に乱れは無いと思うし、この2試合では悪い部分ばかりが出てしまったのだろう。バイエルンサポーターも不安に思う事は無い。しかし、バイエルンとて完璧では無い事を国内外に示す格好にはなった。この2試合を世界の指揮官はどう見たのだろうか。
今回は守備について取り上げたが、ペップにはまだまだ抱えているジレンマがある。ここで全てを書き切る事は無理なので、攻撃に関しての問題点は次回に回す事にしよう。1−4の大敗と引き分け&退場劇に見えたバイエルンの不安要素。ペップの2年目はどうなるのか・・・。