世界各国フリーキックの名手は多くいる。その中でも様々なタイプのキッカーがいた。
大きく曲がるキックを武器とするもの、力強いキックを武器とするもの、ブレ球を駆使するもの、GKと心理的な駆け引きを得意とするもの。
今回は、歴代最高のキッカーとも評されるベッカムと日本を代表するキッカー名波の左足について書いていきたい。
まずはベッカムについてだが、言わずと知れたフリーキックアーティストで、どの距離からでもゴールを狙えるし、味方に合わせるキックも上手い。上記のタイプで表すならば大きく曲がるキックを武器とするものであろう。
彼のキックは大きく曲がって落ちるキックと呼ばれる。壁を越えその後ゴールに吸い込まれるように落ちてくるのだ。
何よりもすごいのはそのボールスピードだ。このようなキッカーは枠に入れるためキックが弱くなることが多くあるが、ベッカムのキックはシュートのような勢いでゴールを捉える。ボールスピードが上がることで壁にぶつけたり、ゴールの遥か上にボールが行くことが多くあるが、ベッカムは違う。ベッカムのすごさはここにある。
また大舞台で結果を残すのも彼のすごいところである。ユーロ予選の絶体絶命の場面やCLでレアルを相手に突き刺した2本のゴール、ワールドカップでのゴール。このように大事な局面でもキックの質が落ちることがない。紛れもなくサッカー界No.1のフリーキックアーティストであろう。
次に焦点を当てていきたいのは日本を代表するキッカー名波の左足だ。
読者の皆様はなぜ名波なんだ。と思われるかもしれない。日本にも、中村俊輔や本田圭佑、遠藤保仁、三浦淳宏と言ったフリーキックアーティストの方が代表的と言われているだろう。
ただ、この中で名波浩を取り上げたのは訳がある。それは彼がGKとの駆け引きを得意とするタイプであるからだ。名波が得意とするのはゴールから近いエリアでのフリーキックである。通常近いエリアでのキックはロベルト・カルロスのような強力なキックで壁のいない方のゴールに突き刺すことが多くなっている。壁の上を越えてもなかなか枠内に飛ばない。枠に入れようとすると勢いがなくなりGKの守備範囲になることがほとんどである。
しかし名波の左足は違う。彼は強いキックが蹴れるわけではない、ベッカムのような鋭く曲がる速いキックができるわけでもない。
だが、彼のキックは非常に正確でゴールの隅を射抜くことができるのである。そんな彼でもキック自体のスピードがないためゴールを陥れるにはGKの逆をつく必要がある。そんな心理的な駆け引きが抜群に上手い。99年に見せた対アントラーズ戦でのキックはまさに名波の左足らしいキックである。