「ベイルが前に残る事」は守備になる
決してチームへの献身的なプレーや守備力が低いわけではないベイルだが、現在ではレアル・マドリーでも部分的に守備を免除されるような存在になった。リーグ優勝もしていないトッテナムでのラストシーズンには、21得点を決めてリーグのMVPに選出されるなど、それだけ得点能力が卓越しているのだ。
そして、レアル・マドリーのようなスター選手が他にはいないウェールズ代表ではさらにそれが顕著となっている。もともとは左SBだったベイルが、現在のウェールズ代表では守備に戻らずに前線に残ってプレーをし続けているのだ。
チーム唯一にして、世界屈指の突破力を持つ選手なのだから当然だ。ボールを受ければDF5人を相手にドリブル突破をする場面も珍しくないほど、ウェールズの攻撃面全般を一手に引き受けているのだから。
また、ベイルが前線に残っていれば、相手DFもその恐怖から攻撃参加ができなくなる抑止力も働くのだから、ある意味では「彼が前残りする事で守備をしている」事になるのだ。
「卓越した“個”の使い方」としては理に適っている。
世界レベルの個人能力を持つ宇佐美が守備力を要求されるJリーグ
しかし、これを日本の状況に照らし合わせると悲しい現状がある。
先日、ガンバ大阪からドイツのアウクスブルクへの完全移籍を発表した日本代表FW宇佐美貴史は、日本人選手としてだけではなく同世代の選手が集まった下部年代の世界大会に置いて、世界屈指の個人能力と得点力を見せ続けて来た逸材だ。ドイツからの復帰後の1,2年間もそうだった。
そんな卓越した個人能力を持つ宇佐美は、ガンバ大阪でも日本代表でも守備力や運動量を要求され、そのために得点力を著しく落としてしまった。
ただ、宇佐美の場合はもともと左サイドMFやFWとしてデビューした選手なのだが、Jリーグに置いてもベイルほどの結果を数字として残せていない。もしくは、残せたかもしれないのに、その前に守備の約束事などを要求されて、世界レベルの個人能力を伸ばし切れずにいるように見えた。
これは、宇佐美が世界に通用する“個”ではないから、そうなったのか?それとも、その時々の監督が目先の結果が欲しいためにそうなったのか?日本サッカー界にとっては非常に悩ましい問題だ。
「なぜ日本に点取り屋が生まれないのか?」の答えはココにあるのではないか?と思う。
そんな宇佐美には、ドイツでその卓越した個人能力を数字として残して欲しいところだが、アウクスブルクでも左サイドMFとして見られている可能性もあるため、このままベイルのような特権はもらえない選手になってしまいそうなのが残念だ。
宇佐美はそんな特権が許さるレベルに到達していなのだろうか?Jリーグでそうならば、ドイツ移籍後はかなり心配だ。