Foot ball Drunker〔173〕visiting『Stelios Kyriakides Stadium』パフォス / キプロス

女神生誕伝説の地にも建てられたスタジアム
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山内光枝:Terue Yamauchi【1982年生】氏の個展『泡ひとつよりうまれきし』が本日(23日)終了する。会場は長崎県の対馬博物館。2006年ロンドンから帰国。海に生きる人々をフォ-カスし素潜りで水中を撮影する独自のスタイル。’15年からはフィリピンに滞在するなどアジア海域で活動していたア-ティストがキプロスのパフォスで個展を開催したのは’17年。この年の欧州文化首都プロジェクトの一環。

第173話はパフォスFCの本拠地ステリオス·キリアキデス·スタジアム。’17年5月25日、キプロス陸上競技協会はスタトス·アギオス·フォティオス村が輩出したボストンマラソン優勝者(1946年)に敬意を表してスタジアムの名前を変更した。


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スタジアムを訪問し日本人だと名乗ると2017年キプロスに滞在した日本人芸術家やキュレ-タ-の名前を数名あげて「お前この人知ってるか?」と質問してきたスタジアム職員。今春の事ではあるが既に彼の名前も忘れてしまった。どうやら彼はボランティア活動を通じて欧州文化首都に参加した日本人達との交流があったらしい。山内氏と面識こそないものの辛うじて作品は知っていたから納得してくれた様子。


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ギリシャ神話のオリンポス12神の1柱をなす美と愛欲の女神アフロディーテはローマ神話のヴィーナスの呼び名のほうが日本では馴染みがあるだろうか。地中海に面したパラエ・パフォス近郊にある岩ペトラ·トゥ·ロミウからアフロディーテがこの地に現れたと伝えられており、女神信仰がギリシャ各地へと拡がるとパフォスを訪ねた王達によって祭壇が築かれたのだとか。

かつて流刑植民地だった豪州の自治が認められ連邦が成立したのは1901年。カナダに至っては1867年既に連邦として独立。1911年から両国は独自の海軍を有している。


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第一次大戦に英国が参戦すると自治領(国)も否応なく協力。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、それにやや遅れて南アフリカからも兵士が派遣されているが、結果各自治国は英本国からの自立性が増している。それに対して大戦後、英国は強引にキプロスを併合。時代の波に逆行して1923年からは直轄の王冠植民地にされてしまう。

キプロスの住民の八割はギリシャ系。島民はギリシャへの帰属を願っていたが、英国政府はこれを弾圧。ギリシャ正教のマカリオス大司教を中心に統合を要求し対立は深まるばかり。1955年の反英暴動が勃発する。


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FCパフォスのエンブレムには男性の顔が刻まれているレアなデザイン。彼こそキプロス解放の英雄エヴァゴラス・パリカリデス【1938年2月26日生-1957年3月14日没】。
パフォス県ツァダで生まれた彼は1955年11月、通学途中、二人の英国兵に逮捕された友人が鉄パイプに縛り付けられ容赦なく殴打される姿を目の当たりにする。英兵を殴り友人を救出するとその場から逃走した。これを機に17歳の少年はEOKAに加入。
1957年2月27日に銃器所持の罪状で19歳にして絞首刑に処された。(処刑された反乱者では最年少)。その後彼の死は、若さと逮捕時の状況等から、大きな論争を巻き起こす事となる。


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ギリシャもキプロス島民を支持し、トルコも加わり、三国間で1959年独立保障協定が結ばれる。こうして翌60年にキプロス共和国が誕生した後に設立されたフットボ-ルクラブは、、エヴァゴラス·パフォスと名付けらた。後に他のクラブと合併してAEPパフォスとなり、2014年にAEクリリアと合併し現在のパフォスFCになったから今年は節目の十周年。昨季のカップウイナ-は今週末にリ-グ覇者アポエルとのスーパーカップに臨む。