指導者として未熟でも人を操るカリスマ性があるヴィルモッツは、代表チームは活動時間が限られているため、常にトレーニングは「調整」を重視。試合毎の戦術練習など皆無で、あってもセットプレーぐらい。緻密な連携は目指すものの、それはコンディショニングや密なコミュニケーションを通してチームを円滑に運営する事で豪華なタレントの個を引き出す事に成功。
あとは、選手層の厚さから来るチームの潜在的なポテンシャルは積極的な采配で引き出し、ブラジルW杯でも途中出場の選手が全6得点中の4得点と結果を出し続けた事でそれは実証されています。
ヴィルモッツはクラブ監督としては未熟かもしれませんが、代表監督に向いていたのかもしれません。
“赤い悪魔”は完全復活 本気で欧州制覇・世界制覇を狙う
ただ、今年に入ってからそのヴィルモッツは、現役時代6年間プレーしたシャルケから監督就任のオファーを受けて転身を考えた模様。ベルギー協会が慰留して続投に至ったようですが、今後は世界のトップ・トゥ・トップに登り詰めるであろうエデン・アザールを筆頭にフェレイラ・カラスコやアドナン・ヤヌザイといった若い世代にはテクニックやスピードはもちろん、創造力に溢れたタレントが台頭して来ている現状で、決して戦術家とは言えない「ヴィルモッツでいいのか?」も世界中から問われている問題。
オランダ流からコンセプトを構築しただけあって、ボール支配率は6割を越えながらも実はチャンスは少ない。ロングボールをフェライニに放りこむ事も多く、「タレントの割には・・・」と乏しい試合内容を指摘されてもいます。現在はEURO予選でもグループ首位をウェールズに譲っているのも気懸り。
ただ、このチームの最大の特徴はチェルシーの新守護神となったテュボ・クルトワと共に、4バックにコンパ二、フェルマーレン、フェルトンゲン、トビー・アンデルワイレルトという主将も務められるセンターバックタイプが並ぶ堅守にあります。そのため、攻撃はアザールやデ・ブライネの個人技やアイデアに依存する部分があるのも事実。
間違いなく選手個々のポテンシャルだけ見れば、W杯やEUROで優勝も狙える戦力を揃えているだけに、今後は日本代表と同じく北京五輪世代が30歳を越えてくるため、本気で欧州制覇や世界制覇を狙うためにどうするか?という今までとは違った努力が要求されます。
過去10年間は国際大会への出場権を逃し続けた国が、本気でEUROやW杯で優勝を狙うには、今まで”陸上の100m走で10秒00までにする努力”と、そこから”コンマ1秒を切る努力”のような違いが生じて来ますが、それを日本のように外国人指導者に頼るのではなく、母国人監督に任せたベルギーの英断を見守りたいと思います。外国人監督で成功したとしても失敗したとしても、それはその後の積み上げにはなりにくく、母国人が率いる場合は失敗したとしても教訓としての土台は確実に出来るはず。
現在のベルギー代表は2016年にフランスで開催されるEURO予選でグループBに入っており、先日はブラジルW杯にも出場したボスニア・ヘルツェゴビナ相手に、CKからフェライニの高さで先制。「100億円の男」で話題を集めるデ・ブライネのミドルシュート、リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドに並ぶであろうアザールもPK弾で3-1と快勝。昨日はアザールの得点によりホームで粘るキプロスに0-1と連勝。相変わらずの個人能力の高さにより、EURO出場権獲得となる2位をキープしています。順調にEURO出場を決めた2016年の夏には、苦戦する近年の世界王者であるドイツやスペインに替わって優勝候補の筆頭になるでしょう。それは躍進著しいウェールズには取って替われない本格派の実力です。
代表チームが強くなり、それまではホーム開催でもスタジアムの半分が空席だったベルギー代表の試合は現在は即完売の状況が続いている模様。しかし、代表チームのメンバーには国内リーグ所属選手は片手で数えるほど。まだオランダの選手のようにベテランになってから国内でプレーできるかどうかも分からないぐらい国内リーグにも問題がある。その国内1部リーグはプレーオフを導入していますが、集客・強化などの効果のほどは・・・。どこかの国と似ているようですが、完全復活した“赤い悪魔”の躍進を楽しみにしたいと思います。