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ベイル放出の真意 〜白い巨人が抱える多くの問題点〜

アザール、ポグバといった100億を超える価値を持つ者の移籍話で盛り上がる中、100億男の都落ち話も注目を集めている。2013年夏にトッテナムから推定8600万ポンド(137億5000万)もの価格でレアルに移籍したウェールズ代表MFギャレス・ベイルだ。

コパ・デル・レイ決勝バルセロナ戦で見せたバルトラを大外回りで抜いていった高速ドリブルシュートや、昨季のCL決勝・アトレティコ戦での決勝ゴールなど、結果を残している割にはサポーターからの信頼は薄く、今夏に放出されるという話まである。
サポーターの大半はベイルよりもイスコを先発起用してほしいと考えており、扱われ方はとても137億の男とは思えない。そこにはアンチェロッティの戦術や、自分たちを騙しながらプレーするレアルの本質が大きく関わっている。ベイルを移籍させるのは正解か否かを検証する。

☆勝利で覆い隠す欠点

レアルの顔と言えば、ベンゼマ、ベイル、ロナウドの3名で構成されるBBC3トップだろう。ゴールの大半を彼らが決めており、アンチェロッティも重要な試合では常にBBCトリオを先発起用してきた。
BBCは確かに脅威だが、チームとして見た場合はどうだろう。サッカーとは個の力と組織がバランスよくマッチして初めて機能する競技であり、ベイルやロナウドの存在だけでレアルを強いと判断するのは間違っている。

まずアンチェロッティの戦術だが、彼はポゼッションを重視した攻撃的なサッカーを志向している。ただし彼は稀代のバランサーであり、守備に走らないロナウドの事を考慮したうえでの守備システムの構築にも成功している。ポゼッションとバランスの取れた守備がレアルのメインコンテンツとなっている。
では、その戦術にロナウドとベイルはマッチしているのだろうか。彼らが最も能力を発揮するのはボールを持って前を向いた時、すなわちドリブルを仕掛けるだけのスペースがある場合だ。そのため、彼らは90分間の多くの時間をサイドに張ってプレーする事が多い。サイドの方が相手と1対1になりやすく、前を向いてボールを持ちやすいからだ。

しかし、ここでミスマッチが生じる。ロナウドとベイルがサイドに張っている場合、味方選手と距離が出来てしまうのだ。当然パスの距離が長くなり、ポゼッションを保つには効率が悪い。ロナウドとベイルは中央でのプレーを得意としていないため、彼らに中央でプレーさせるのは難しい。
こうした欠点を補うには中央からバイタルエリア付近にかけてのエリアで頻繁にボールに絡み、BBCの好機をお膳立てする存在が必要となる。それがモドリッチやイスコの仕事であり、レアルにとって最も重要なポジションはインサイドハーフなのだ。目の肥えたサポーターはチームの現状を理解しており、だからこそイスコを望むのだ。

ロナウドとベイルの縦へのスピードを最大限に活かすのであればカウンター以外に手はないのだが、ロナウドが守備に参加しない時点で堅守速攻のスタイルを研ぎ澄ますのは難しい。加えて右のベイルも守備に熱心では無いため、アンチェロッティとしてはポゼッションを保つ事が最も安全な戦い方という認識があるに違いない。
現在のレアルは守備時に4−4−2に変化する形を取っているが、右サイドの守備は主にベイルが担当する。サポーターはベイルの守備能力にも不満を持っており、さらなるハードワークを求めている。しかし根本的な問題は守備を全くしないロナウドにあり、ベイルからすれば納得のいかない部分もあるだろう。
サポーターがロナウドの守備に目を瞑っているのも、彼が毎試合のようにゴールを決めるからであり、ロナウドの半分程度の得点しか奪っていないベイルに批判の矛先が向かうという訳だ。ベイルがレアルで安住の地を手に入れるにはロナウド以上のパフォーマンスを披露し、ロナウド不要論が出るほどの働きをしなければならない。