シャビ・アロンソのまさかのボールロストから始まったポルトの大金星ストーリー。バイエルン有利の見方が大勢を占める中、ポルトは開始10分で2点のリードを得ることに成功した。メディアはこぞってポルトの戦略勝ちと書き立てたが、その見立ての多くは間違っている。
ポルトが敷いた本当の策略、そして開始10分での2失点よりもマズイ事が起きていたバイエルン・・・。サッカーは本質を見抜けば面白くなる!!
☆あの2点は単なるラッキーでしかない
前半3分、10分と、バイエルンは最終ラインでの2度のボールロストからGKとの1対1を作られた。1つはノイアーがPA内で相手を倒してPKとなり、もう1つはクアレスマに冷静に決められてしまった。あのポゼッション巧者であるバイエルンが2度も最終ラインでボールを失うなど、そうそう見られる光景ではない。
ポルトが前からプレスをかけてきたのは事実だが、何か特別な事をしてきた訳ではない。あの2つのプレーは、どちらもバイエルン側の単なるミスだ。最終ラインでボールをキープするという行為は、今回のような事態を引き起こす非常にリスキーな行為でもあるのだ。今回はそれが2度も起こってしまったという事だ。
確かにポルトのプレスには勢いがあるように見えたが、どちらかといえばポルトの監督であるロペテギは慎重なスタンスで試合に入っている。
この日のポルトは、中盤でのマッチアップをマンマークでハメている。最前線のマルティネスがアロンソをマークするところから始まり、エレーラとオリベルのインサイドハーフがチアゴとラームをそれぞれマークする。彼らの後方にあるスペースはレアル・マドリーからレンタルで加入しているアンカーのカゼミーロがカバーする仕組みとなっている。
つまりバイエルンのCBであるボアテングとダンテにはプレスがかかっておらず、バイエルンとしては普段通りの試合と呼べる展開だった。それはデータも表しており、この日のバイエルンのポゼッション率は69%と相手を圧倒している。
このデータからも分かるように、バイエルンはボールを持つことに苦労していた訳ではない。ポルトよりも、バイエルンのDFラインに猛然とアタックをかけるドルトムントの方がプレスの強度では上回っていたはずだ。
その証拠に、2週間前の4月5日におこなわれたブンデスリーガ第27節のドルトムントVSバイエルンでは、バイエルンのポゼッション率は50%となっており、いかにドルトムントのプレス強度が高いかを示している。
全てをポゼッション率で判断する事は出来ないが、ポルトとの一戦でバイエルンがボールを保持していた1つの参考資料にはなる。ポルト側も、まさかマルティネスとクアレスマの単独プレスでボールを奪えるとは想像もしていなかっただろう。
あの2点はロペテギにとってもサプライズであり、良い意味でゲームプランが狂ったはずだ。なぜならロペテギの組んだ戦略は相手をリスペクトしたものであり、守り切る事に主眼を置いたものだったからだ。では、どんな戦略だったのか。
ロペテギの守備プランを簡潔に表せば、「サイドよりも中央を重点的に守れ!」となる。マンマークで相手の自由を奪うと同時に、ペップが好む中央への縦パスを徹底的にケアしていたのだ。この試合で何より大きかったのは、サイドハーフのクアレスマとブラヒミの守備法だ。
彼らは相手サイドバックのベルナトとラフィーニャをそれぞれマークする役割を担っているが、彼らへのマークよりも中央に出来るスペースをカバーする事に意識を傾けていた。そのため、時折ベルナトとラフィーニャをフリーにしてしまう事があったものの、彼らの守備は実に効果的だった。