チームの10番を背負うスウェーデン代表のMFである彼は、上記した攻撃陣の若手を含め、前線には新加入選手も多かった事もあり、今季は第5節まで先発1試合と開幕当初はレギュラーではなかった。しかし、彼が先発に定着し始めた第6節以降、チームは8連勝と全勝街道を走ることに。
そんなフォルスベリは「サッカー一家」として知られ、祖父・父親に続き、3代続いてGIFスンズバルというスウェーデンの地元クラブでデビュー。特に父親は1990年代までプレーした同クラブで123得点を挙げ、背負った背番号「10」が永久欠番となるほどのレジェンド。
しかも、昨年7月に結婚したばかりの彼の奥様もサッカー選手で、彼と同じくRBライプツィヒでプレーしている。
民主的な新時代のスウェーデン代表10番
サッカー一家に育った彼は、昨年のEUROフランス大会にもスウェーデン代表として出場し、全3試合共に先発でプレー。当時は6番を着てプレーしたが、同大会を最後に代表を引退した現在35歳のFWズラタン・イブラヒモビッチ(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド退団発表)の跡を継ぎ、現在は彼の10番を継承している。
点取り屋であるだけでなく、アシスト能力も高く、身長195cmの高さや強さ、巧さ、若い頃は速さまで揃えた世界最高のFWだったイブラヒモビッチ。ただ、彼はそれ故に守備を免除される独善的なプレーやピッチ外での行動でも有名な選手だった。
そんな絶対的なカリスマ性を持つイブラヒモビッチとは違い、フォルスベリはライプツィヒが志向する『パワー・フットボール』で最も運動量が要求される2列目のポジションでフルスプリントを繰り返す『民主的な10番』だ。
ハイ・インテシティの中で「違い」を作る『非カリスマ型リーダー』
ライプツィヒでは前線から連動したプレッシングを敢行し、外されれば守備ブロックの一端を担うために後方に戻り、守備から攻撃への切り替え後も左サイドから中央や逆サイドへ抜けるダイアゴナルランでパスを呼び込み、ドリブルや周囲の選手とのワンツーやダミーラン(囮の動き)で攻撃に関与し続ける。
フォルスベリはそんなハードな役割をこなしながら、トップスピード&ハイ・インテンシティ(プレー強度)の中でもプレー精度が落ちずに得点やアシストを量産するための”違い”を作れる存在だ。キック精度が高く、ライプツィヒでも代表でもセットプレーのキッカーも務める。
スウェーデン代表では左サイドMFとしてプレーし、サイドから中央へカットインするドリブル突破から強烈かつ正確なミドルシュートや、柔軟なスルーパスを披露する天才肌の10番ぶりを見せるが、守備時には組織的な守備ブロックの一員としてスウェーデン伝統の堅守にも貢献する献身的なMFだ。
サッカー界だけでなく、一般社会でも『非カリスマ型リーダー』が高く評価される現代。179cm78kgと一般的な体格ながら、組織プレーを遵守し、個人としても違いを作って攻撃陣を牽引するフォルスベリは、そんな『非カリスマ型リーダー』として、現代サッカーが求める理想のサッカー選手なのだ。
25歳にして初めて欧州主要国のトップリーグを経験したフォルスベリだが、すでに国内外のビッグクラブから獲得オファーが殺到している。彼がどのクラブで新シーズンを迎えるのか?筆者は今夏の移籍市場で彼の動向が最も気になっている。