83〗Kadrioru Staadion / タリン


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アイヴァル·ポフラク:Aivar Pohlak【1962年10月19日生】はタリン工科大学を卒業、教師や児童文学の執筆をしていた異色の経歴。タリン·チャンピオンシップⅢでプレーしながら、’88年からはタリンのスポーツスクールで指導をしていた現役ストライカー。ソ連邦崩壊後、エストニア·フットボールの復興を掲げ1990年3月10日アマチュアクラブを基盤にFCフローラ·タリンを設立する。ユース出身の選手のみで立ち上げたチームはその後もエストニア国籍選手のみの純血主義を貫き、’16年までコーチ兼会長を務めた。
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会長を陰で支えた敏腕事務局長の経歴

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’92年にナショナルチームのコーチ兼任を経て翌’93年にエストニアフットボール協会の理事会に加わる。日本でJリーグ開幕と同時期にこの小国もリーグが始動していたから中々に興味深い。2003年には副会長、’07年に会長に選出されたポフラク氏。現在は銀色に変わった長髪と口髭がトレードマークの名物会長。12年にはエストニア初の主要国際大会であるUEFA U-19欧州選手権決勝を開催。’18年のUEFAスーパーカップ、また’20年のU-17欧州選手権決勝を同国で開催し成功へと導いた。
現在トップリーグに所属するFCクレサーレも’97年に同氏が創設したクラブ。 
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その’97年からエストニア代表にも成長の兆しが見え始める。主にビジョンを描き構想を練るのが会長であるポフラク氏の役割。一方組織の実務は昨年までの約三十年間、事務局長のトヌ·シレル:Tõnu Sirel【1957年10月29日生】が任されていた。トップクロスカントリースキー選手であり、1978年と’81年のソビエト連邦クロスカントリースポーツ協会選手権では個人種目でひとつ、リレー種目でふたつの金メダルを獲得。また’82年にエントリ-したタルトゥ:Tartuマラソンでも優勝した筋金入りのアスリ-ト。’93年、ラプラ県カイウ市の市長に就任するとクイメツァ体育館を建設し、またカイウの市民スタジアムの改修にも着手する。その頃から若年層のフットボール指導環境に興味と疑問を感じていたシレル市長。当時十歳の息子がスクールに通うようになると本物のフットボールを見せようと、タリンまで試合観戦に連れて行きながら、自身ものめり込んでいく。ちなみに息子のプリート·シレル:Priit Sirel【1985年12月26日生】はヴィリャンディJKトゥレヴィクでプレー。エストニアU19代表にも選ばれている。前述のスコットランド戦も観戦する予定だった親子。試合当日協会に何度も電話で、試合が本当に開催されるのか尋ねたそうだ。
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ポフラク氏から協会で働かないかと勧誘されたのが’97年。行政よりもスポーツに惹かれたシレル氏の協会入り当時の職員はたったの五人。そこからスタートし’12年まで書記長を務めると、事務局長へと昇進。文化省の協力を得て2020年から国内各郡に少なくともひとつフットボールの競技施設を建設する長期プロジェクトを始動。ラプラ·ケスクリンナ学校の隣に建設された施設の建設費用は総額二百七十万ユーロ強。そのうち百五十万ユーロは文化省からの助成金、エストニアサッカー協会からの拠出金は十万ユーロのみ。放映権料を収入源に運営されていたかつての協会。今でこそテレビ放映権はどの国と対戦しても同額に改善されているが、当時は抽選結果が財政に直結していた。イングランド、イタリア、スペイン、フランス、ドイツなど過去世界一を経験している強豪人気国との試合が組まれれば当然視聴率は高く、極端なところではベラルーシとドイツとの試合では、放映権料の差は百倍もの開きがあったから死活問題だった。
’92年から本格的にスタートしたものの、あらためてエストニアのような小国とスポンサー企業からの百億円を超える協賛収入に支えられる我が国を比較するとその差は歴然としている。
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さて来年のFIFAワールドカップ北中米大会。日本代表の目標は過去四回挑んで弾き返された八強の壁。おそらくサッカーに知識と興味がない方はベスト16までいけて、あと一勝ができないのか不思議に感じていることだろう。今更ではあるが伝統の重み、トーナメントとはいえ四年に一度開催の世界一決定戦は間もなく百年を迎える。過去二十二回の開催で優勝国は西ドイツとドイツをひとつにまとめても八カ国しかない。黎明期に優勝した古豪ウルグアイは今ではワンランク落ち、そこに’16年のユーロ制覇以降、UNLのタイトルも二度獲得したポルトガルを入れるべきか。順当に勝ち抜くとして、この強豪の一角を崩さなければベスト8に入れないし、オランダやクロアチアの欧州セカンドグループ、またアフリカで成長著しいモロッコや南米の三番手の列強と日本は鎬を削らなければならない。
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