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サッカーの進化は終わらない 2014 ~上

 人とは、どこまでも貪欲な生き物だ。もっと先へ、もっと上へと進歩を遂げてきた。その繰り返しが現在の人間社会となる訳だが、その構図はサッカー界でも変わらない。もっと強いチームを、もっと良い選手をの発想で進化を続けている。
 そしてその進化のほとんどは、4年に1度おこなわれるワールドカップイヤーでお披露目される事が多い。欧州サッカーでは毎年のように進化しているが、ワールドカップは全世界にその進化を知らしめる舞台となる。

 2014ワールドカップを制したのはドイツだった。ドイツの優勝で、多くの国々がスタイルを真似る事になる。ファッションと同じで、他人に真似されるようになれば流行を生み出したといっていい。
 2010年ワールドカップを制したスペインは、世界にポゼッションサッカーという流行を生み出した。

 では、ドイツの優勝で何が起こるのか。人類が求める果てしない進歩を今年のワールドカップから感じ取る事が出来た。その答えを2014年の最後に書き出しておきたい。

☆トータルフットボールの追及とスペインという存在

 ドイツのスタイルを一言で表現すれば、トータルフットボール。トータルフットボールという言葉は1974年ワールドカップでオランダ代表が採用した戦術の俗称とされている。簡潔に言えば、全員で攻めて全員で守る。とにかく走れ!という事だ。
 当時はFWが点を取り、DFは守るという考え方が根付いており、FWはいっさい守備に参加しなかった。守るのはDFの仕事であり、逆にDFも攻撃には一切関与しなかった。
 そもそも攻撃を苦手とする屈強な人間ばかりがDFとして起用され、FWにはテクニックのある選手ばかりが使われた。

 この考え方を間違いだと提言したのがトータルフットボールといえる。これを機にサッカーは大きな進化を遂げる事となった。

 いつの時代からかFWも守備に走る走力を求められ、DFも攻撃の出発地点としてビルドアップ能力を求められるようになった。
 今ではGKですらパスを正確に蹴る時代なのだ。このような万能型の選手が生まれるようになった背景には、パス、ドリブル、シュート、スピード、スタミナ、あらゆる要素を備えた選手が欲しいという人間の欲望がある。
 当然苦手分野は無い方が良い。現在世界で活躍する選手を見ると、その多くが万能型の選手であることが分かる。全くビルドアップ出来ないDFはほとんどいなくなったし、守備に走らないFWも少数だ。その完成体がドイツ代表といえるのかもしれない。

 その証拠に、ドイツにはタイプの似た選手が多く存在する。ゲッツェ、エジル、シュールレ、ロイス、クロース。彼らはテクニックがあり、戦術理解能力に長けている。チームの中で個性を活かす事の出来る選手たちだ。そしてチームのために汗を流す事が出来る。体格もよく似ている。小柄でスピードがあり、長距離というよりは短距離でのスプリントや小回りの利く反転力に秀でている。日本代表でいう香川や柿谷のような選手であり、長距離よりも短距離で威力を発揮する選手が世界的に重宝されているのが分かる。

 そんなドイツのトータルフットボールは、2006年の時点でほぼ完成されつつあった。
 攻守の切り替え、組織としての成熟、ベテランと若手の融合など、あらゆる側面で世界のトップだったといえる。成績も優勝とまではいかなかったが、2006年は3位、2010年も3位と好成績だったのは間違いない。
 特に2010年は、イングランドやアルゼンチンといった強豪を粉砕し、優勝候補の一角だった。

 しかし、準決勝でポゼッションを軸とするスペインに敗れた。スペインにはユーロ2008決勝でも敗れており、2010年の時点ではスペインの方が1枚上手だったといえる。

 しかしこの敗戦から、ドイツはさらなる高みへ到達する。

(続く)