フェロー諸島がギリシャに勝利し、リヒテンシュタインがモルドヴァを下すなど、波乱の結果が相次いだユーログループリーグ第四節だったが、イングランド−スロヴェニア戦は下馬評どおりにイングランドがスロヴェニアを下し、グループリーグで4連勝と突破にまた一歩前進している。
しかし、イングランドが万全の試合をしたかといえば、そうでもないのが面白いところだ。
少なくとも前半はスロヴェニアのゾーンディフェンスを全く崩すことが出来なかった。
特にイングランドは3ボランチに近い形での布陣を敷いていたため、攻撃時はウェルベックとルーニーのFW陣とトップ下のスターリングの三人が中心となるものの、この三人がスロヴェニアのゾーンプレスにより機能不全に陥っていたためだ。
上手くいかない攻撃で焦りが生じたのか、不幸な形でスロヴェニアに先制を許してしまった。
後半、ヘンダーソンが『完璧な』ヘディングを叩き込んでしまったのだ。
しかし、これで逆に開き直ったのか、イングランドは攻勢に転じていく。それがルーニーへの微妙なプレイをPKとして認めさせることにつながり、これをきっちり決めたことが試合の趨勢を決めてしまった。
その後は3ボランチの一角やサイドバックも前線に顔を見せるようになり、攻撃が活性化。
ゾーンディフェンスでチーム自身の俊敏性を補っていたスロヴェニアはプレスを上手くかけられなくなり、ズルズルと守備陣が後ろに下がってしまい、イングランドに更に攻勢を許す悪循環に陥ってしまった。
特にウェルベックの2ゴール目はこれが顕著に現れたものだと言えるだろう。
しかし、ウェルベックは2トップでの起用のほうが生きる選手だと改めて感じる。プレイタイプ的に裏へ飛び込むシャドーストライカー的な動きが得意なだけに、ルーニーとのコンビはまさに水を得た魚のように生き生きとしていた。
アーセナルでも活躍はしているものの、1トップでの起用では彼の持つ魅力を完全には生かしきれないだけに、ムッシュには是非とも布陣変更も視野に入れて欲しいものである。