象徴的なエピソードがある。前任のヴァレリーはある試合で前半の30分過ぎに主力FW藤本主税をベンチに下げた。ベンチに戻って来た藤本は不満を全身で表現し、ペットボトルを蹴り上げてはコーチの手を払いのけた。それまで結果があまり出ていない時期でも、「責任は全て監督である私にある」と言い続けていたヴァレリー監督は、「藤本はチームのためではなく、自分のためにプレーしていた」と初めて名指しで選手個人を批判した。そして、意地を張った藤本はレギュラーから外された。その後、チームは苦戦に陥る中、日本代表戦による中断期間に突入。その時だった。サンフレッチェ広島専門のオフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』の中野和也氏によるヴァレリー監督のインタビューが行われている時、藤本が監督のいる部屋を訪ねた。中野氏によると、その時のヴァレリー監督の表情は、「試合に勝った時にも見せた事がないほどの温かみのある笑顔」だったそうだ。その“父親”ともとれるヴァレリーの見せた笑顔は、ミハイロ・ぺトロヴィッチ(現・浦和レッズ監督)や森保一といった後続の監督にも共通する部分であると感じる。