その結果、後半戦は前半戦よりも失点が「17」から「10」へと大幅に減り、得失点は「-13」から、「-3」となって接戦が急増した。攻撃サッカーを掲げながらリーグワーストの11得点に終わったチームの拠り所が守備面にあったのは実に皮肉だが、メンタル面に不安が生じる中で攻撃的に振る舞うことなど出来るわけもない。
この日も前半に存在感を示した右ウイングの佐藤や、中盤と前線を上手くリンクしたFW西川は、後半は共に守備に奔走した。<4+4>のゾーン守備のブロックでサイドのスペースを埋めるのは<4-3-3->の両ウイングを担う彼女達だからだ。
間違っていない強化ステップ~待つのは継続か刷新か?
試合後、千本監督はシーズンを振り返りながら、なでしこリーグ2部を戦ったうえでの1年間の課題を述べた。
「決定的な仕事ができるストライカーやCBがいるかどうか、そんな個人レベルの話ではないと思います。今のサッカーで勝っていくためでも、1つの武器だけでは戦えないし、べースとなる部分が全体的に足りていないと感じました。」
千本監督は課題も挙げたが、チームの成長について言及することも忘れなかった。
「去年よりも攻撃と守備の隙間がなく攻守の切り替えが速い試合の中で、少ない時間と狭いスペースの中で状況判断が出来ているし、ボールを失ったあとのプレッシングも早くなっている。それは1つ上のカテゴリーで年間通してプレーしてきたからだと思うので、常に上のカテゴリーに居続けることが重要です。」
最近、サッカーには「①攻撃」「②守備」「③攻撃から守備への切り替え」「④守備から攻撃への切り替え」という4つのフェーズ(場面)が存在するとよく表現される。これを実際のプレー局面に沿って落とし込むと、「①攻撃=ポゼッションしての攻撃」「②守備=非ポゼッションに対する守備」「③攻撃から守備への切り替え=非カウンターに対する守備」「④守備から攻撃への切り替え=カウンター攻撃」となる。
ポゼッションサッカーを貫くバニーズは、上記した①と③の局面が多く、自陣の低い位置からパスを繋いで相手のプレスを掻い潜ると、④の局面から得点も量産した。それが昨年までのチャレンジリーグ時代のバニーズだった。
ところが、相手のレベルが上がった今季は②の局面が増え、その対処として上記した「ボールを中心にしたコンパクトなゾーンディフェンス」を整備した。数字上の成果も出ているし、強化の手順としては間違っていない。
あとは、この「経験と成果」を「成功体験」とすべく、良いサイクルへと導いていく過程が必要だ。それに必要なのは、継続か刷新か?チーム編成の実権を握る越智健一郎ゼネラルマネージャーは、より重要な決断を迫られることになる。
(その後、4年2カ月に渡って指揮を執って来た千本監督の契約満了が発表。新監督として、ちふれASエルフェン埼玉をなでしこリーグ1部昇格へ導いた実績がある元井淳氏の就任が発表。)
次回予告:バニーズ京都SC flapsの取り組み
そんなバニーズ京都SCの掲げるサッカーはトップチームだけではなく、下部組織にも浸透している。次回は、そんなバニーズの下部組織の現状についてレポートします!お楽しみに!!
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→バニーズ京都SCというチームと千本哲也監督をモデルに、教育現場や一般社会の職場にもつながる「指導」についての記事になっております。ご一読ください。