flapsでもアンカーを務めることの多いMF大場柚季(上記写真背番号6)は、U-15日本女子選抜に選出される選手だが、そのプレースタイルは一般的なアンカーとは一味違う。
中盤の底に位置するアンカーにはワンタッチ・ツータッチでのシンプルなプレーが要求されるのが一般的で、ましてやパスサッカーを根付かせているチームならそれも顕著なはずだが、大場は中盤の底から自らドリブルで持ち上がって得点に直結するプレーも披露する。そして、何よりも楽しそうにプレーする。
「ドリブルで運びながら見れているか?それもパスを繋ぐために運んでいる。マークが1つズレれば、パスコースも1つズレたり、新たにできるコースもあります。そこをドリブルしながら見れているかどうか?は指導のポイントです」(阪田監督)
日本の女子サッカーの課題:中学年代の選手の受け皿
2011年、なでしこジャパンがFIFA女子ワールドカップドイツ大会で初優勝を果たし、空前の「なでしこブーム」に沸いた頃、日本の女子サッカー界は深刻な問題を抱えていた。なでしこリーグのチームやリーグ自体の運営もそうだが、それ以上に深刻だったのが、中学生年代のチームの少なさだった。
せっかく小学生時代に熱心にサッカーに打ち込んだ女子選手が、中学生になって所属するチームやプレー環境がなく、致し方なく競技生活を諦める。それが首都圏や大都市でも珍しくない状況だったのだ。現在なでしこリーグでプレーする選手の中にも、小学生でサッカーをしていながら中学生の時はプレー環境がなくて別のスポーツをし、高校生になってからサッカーに戻った選手も意外と多い。
別のスポーツを経験することはそれほど悪いことではない。しかし、中学年代に相当する「ジュニアユース」というカテゴリーは、選手の発育によってキック力や筋力、体格が上がり、体力的にもプレーの幅が拡がる。思考的にもより論理的なサッカーの理解も可能となる年代だ。最近では「最も優秀な指導者はジュニアユースに揃えるべき」との考えが一般的になるほど重要な年代である。
そして、2014年、日本女子サッカーリーグは、中学年代の強化を目的として『U15なでしこアカデミーカップ』を創設。同年には『なでしこリーグガイドライン』を作成し、なでしこリーグ1部に参加するクラブには、「15歳以下のアカデミー(育成型)チームを編成する」が条件に含まれることになった。
『U15なでしこアカデミーカップ』は、2014年に16チームでスタートして以降、現在はなでしこリーグ1部と2部所属チームの下部組織は絶対参加が必須となり、2018年シーズンは27チームが参加する大会となっている。(バニーズも2015年シーズンから参加。)
「楽しみ」ながら「勝つ」バニーズのサッカー
阪田監督によると、「中学年代のチームは確実に増えている」と言う。「なでしこブーム」によって、2011年以降に各地域で中学生年代のチームは増えつつあり、小学生から中学生に上がった段階でサッカーを辞めざるをえない女子選手の数は少なくなって来た。
ただ、「競技志向が強過ぎて勝利至上主義が強まる中、シンプルに『中学生になってもサッカーを続けよう』と思っている女の子や、『サッカーをやってみよう』と体験加入してくるような女の子がサッカー本来の楽しみを知れずに敬遠してしまう」(阪田監督)と、いう流れがあるのが実情だそうだ。所謂“町クラブ”の数が少ないのだ。
受験テクニックと基礎学力の違い
そんな中、バニーズ京都SC flapsは、「“楽しみ”ながら、“勝つ”ことを両立」している。阪田監督が続ける。
「当然我々は下部組織なので、勝つ事を意識しながらもトップチームに選手を昇格させることが1番の目的です。楽しくサッカーをプレーしながら、特に今年(2018年シーズン)に関しては結果もついてきました。だからこそ、“楽しみ”ながら“勝つ”ことは両立できると思っています。」
阪田監督の言葉通り、2018年シーズンに行われた『JFA第23回全日本U-15女子サッカー選手権』、『JFA 第22回全日本U-18女子サッカー選手権大会』、『JFA 第9回全日本U-15女子フットサル選手権大会』の3つのカテゴリーの京都府大会において、バニーズ京都SC flapsは全て優勝を飾っている。その上で、大場柚季、平原花珠といった下部年代の日本代表チームに招集される選手も出て来た。
「flapsで徹底しているのは、基本技術である“止めて・蹴る”や“周りを見る”というサッカーの基本となる部分だけです。それを伸ばし続けることで試合でできるようにと、日々練習しています。特別なことを練習しているわけではないので、他のチームが見るとビックリされるかもしれません。」(阪田監督)