eスポーツだけではない ポーランド南部の魅力
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ショパンの旋律が哀しく聞こえるのはポーランドの歴史と無意識に重ねてしまうからなのか。北のワルシャワと南のクラクフ、ほぼ中央に位置するのがシフィェンティクシシュ県の都キエルツェ。その名は第二次終戦直後の惨劇で広く知られる。当時のポーランドではポグロムの嵐が吹か荒れていた。ポグロムとはユダヤ人に対する反ユダヤ主義者による集団的な暴力行為。暴徒によって40人以上の死者と多数の負傷者を出した闇の歴史を背負う街も現在は日々穏やか。市民は平和を満喫しており昼間から呑気に麦種で喉を潤したのは2015年の春。この頃隣国への侵攻など想像もしていない。
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その一年前、’14年に首脳との懇談会目的で我が国の総理大臣が初めてコートジボワールを訪問しているが今や鬼籍に。同年のFIFAワールド杯でザックJAPNがエグい負け方をした相手国だけによく覚えている。そして実質止めを刺されたのがギリシャ。’04年の大会覇者も今回の大舞台にはたどり着けなかったから恐ろしきかな欧州。
遂にそのUEFA欧州蹴球選手権EURO2024が開幕。しかもABEMAが無料で全51試合無料生中継の大盤振る舞い。涙が出るほど有難くPC観戦した当日はあくびで涙が止まらない。電車内で見掛ける寝不足気味の人は皆ユーロに感染しているように思えてくる。
前回コロナ禍での開催に比べ、画面に映し出される満員のスタンドからの熱気がSplendid。これが本場の本物。参加24ヵ国名に一通り目を通すと、各国各都市を旅した思い出が脳内に蘇える中、一ヵ国だけ真っ白なのが初出場国ジョージア。この国はあの世に旅立つ前に訪問できる気がしない。
本日注目はお気に入りオランイェと対戦するポーランド。プレーオフを経ての本戦出場ではあるが勿論侮れない。
チケットの日付は5月30日、キエルツェから150キロ先にあるシロンスク県の都カトヴィツェ行き。先月日本大使も招かれた欧州経済会議(EEC)の開催都市は今や“eスポーツの聖地”に。それまでハノーファーで行われていたeスポーツの祭典がポーランド南部の都市に定着するのは’14年から。
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列車内でうとうと居眠りした後車窓に目をやるとザビエルチェ駅。寝過ごしてはおらずホッとして降りる仕度にかかるとする。
前日の試合観戦チケットは20:30キックオフ、第138話はアレーナ·キエルツェ。収用人員は15,700人と少なめながら’06年に完成すると、翌年07年の3月にはEURO2008予選アルメニア戦の会場として使用されている。
訪問時の名称はコルポーター·アレーナ。現在ネーミングライツを契約しているのは日本のSUZUKI。藤沢や鎌倉で見掛けるスズキアリーナは全国で営業しているがSuzuki Arenaはポーランドだけ。自動車関連以外にも日系企業の進出は目覚ましいポーランド南部。
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試合を観戦するにあたり会員証が必要らしい。他のスタジアムでエクストラクラサを観戦していたが、そんな面倒はなかったのにと思いつつ言われるがままパズポートを渡し写真を撮ってもらう。思いの外簡単で良い記念品になったと満足してフレームに収めたのがこちら。
試合会場でスタジアム外観を眺めているとプレスの男性Aさんに声をかけられた。日露戦争以降、親日国の名に偽りなしのポーランド。
そしてこの方2002年にFIFAワールド杯取材で訪日の経験もあるらしい。すると「記者席で一緒に見よう!」と提案してくれて、セキュリティに疑問を感じながらも隣の席に腰を下ろす。スタンドは1/3程度は埋まっているのか。
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