ヴェンゲル監督はヴァイオリンの音色に敏感な指揮者だ。そこに最も拘りと美学を求めている。型番A-001のヴァイオリン(ポジション)でしか出せない音を、セスク・ファブレガスという最高級のテクニックを誇るヴァイオリニストに弾かせたい譜面を用意し、尚且つアドリブ演奏も許可する。そんな監督だ。理想の音やハーモニーを奏でる事に神経質な部分がある指揮者・ヴェンゲルだが、演奏者・セスクがいなくなったからと言って、同じ事を新任のアーロン・ラムジーに託す事はない。ラムジーには型番A-002のヴァイオリンを買い与えて、彼とその楽器に合う譜面に書き換えるのだ。それが指導者としての矜持なのだろう。