12月22日におこなわれたイタリア・スーパーカップこそ逃したものの、現在セリエAで首位を走るユヴェントス。
11-12シーズンから3連覇を成し遂げ、戦力的にも突出しているのは明らかだ。しかし今季の開幕間近になってアントニオ・コンテ前監督が突如辞任し、開幕早々ユヴェントスは危機的状況に陥った。
コンテ政権4年目となるはずだった今季は、セリエAの優勝に加えてCL制覇も狙っていたため、コンテの辞任は想像以上に痛かった。そんな難しい状況下でユーヴェの指揮官となったのは、10-11シーズンより4年間ミランで監督を務めていたマッシミリアーノ・アッレグリであった。
アッレグリといえばユーヴェの敵であり、ライバルであるミランから監督を選抜した事にサポーターは異議を唱えた。開幕間近での就任&サポーターからのバッシングという2つの難題を抱えたアッレグリだが、これまでの仕事はほぼパーフェクトといっていい。
天性のバランサーでもあるアッレグリがユーヴェに何をもたらしたのか。そこから見えてくる欧州制覇への道のりを探る。
☆悩みを解決した4-3-1-2
11-12シーズンよりコンテに率いられたユーヴェは、3バックをベースとした特異体質なシステムを採用していた。この3バックシステムこそがセリエA3連覇を成し遂げる原動力となり、マッツァーリが率いていたナポリと共に3バックブームを再燃させる事となった。
このように前任の監督が特別なアイデンティティーで仕事をしていた場合、それを引き継ぐのは実に難しい。コンテには独自の理論が存在し、ミラン時代から4バックを採用してきたアッレグリが3バックに対応するのは不可能と思われた。
実際のところ、今季も継続して採用している3バックはコンテの頃と変化が無い。結果的にアッレグリは3バックシステムのブラッシュアップには失敗している事になる。
ただ、開幕間近で就任という限られた時間の中で最適な答えを見つけ出したとは思う。
というのも、シーズン序盤のユーヴェはまさにコンテが築き上げたそのままのチームであり、アッレグリの色はほとんど見られない。アッレグリは監督席にただ座っているだけの存在だったのだ。状況が変化したのは、CBの一角であるバルザッリが負傷した時だ。
バルザッリ、キエッリーニ、ボヌッチのCB3枚はコンテ時代から不動の組み合わせであり、代えの利かないDFラインだった。その1人であるバルザッリが長期離脱を余儀なくされた事を受け、アッレグリは自分の色を出し始める。それが4バックへのシフトだった。
アッレグリはミラン時代から4-3-1-2を多用しており、中盤をダイヤモンド型にしたスタイルを好んでいた。その形がユーヴェにマッチすると判断し、思い切ってシフトチェンジしたのだ。これによって起きた変化は2つ。1つは、3バック時よりも攻撃的になった事。
サッカーにあまり触れていない人々は、3バックよりも4バックの方が守備的と考える人が少なくない。なぜなら4バックの方がDFが1枚多いからだ。
しかし実際はそうではない。4バックがCB2枚なのに対し、3バックはCBが3枚。もちろん3バックで攻撃的に戦う事も可能だが、4バックだとCBの代わりにもう1枚攻撃で違いを作れる選手を入れる事が出来る。
分かりやすく言えば、バルザッリよりも攻撃的な選手を入れる事が出来、攻撃に力を傾けやすいのだ。そしてもう1つポジティブな変化があった。
それはマルキジオ、ポグバ、ビダル、ピルロの同時起用である。コンテが採用していた3-5-2の場合、中盤の構成はウイングバック2枚、セントラルMFが3枚となる。今挙げた4名のMFは全員セントラルMFのため、このシステムでは誰か1人をベンチに置くしかない。
11-12シーズン、12-13シーズンまでは何の問題も無かった。しかし昨季より、ヴィエラ2世の異名をとるフランス代表MFのポグバが急成長した事で、ベンチに置いておくには惜しい人材となったのだ。マルキジオとビダルもそれぞれW杯を経験した代表プレーヤーであり、外せない。