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[アジアカップ決勝マッチレポート]
韓国<A組1位>1ー2豪州<A組2位>
得点者
【韓国】ソン・フンミン(90+1分)
【豪州】ルオンゴ(45分)、トロイ―ジ(105分)
肉弾戦が続く激しい序盤を経て 開催国が巧みな試合運びで先制
2強が日程の有利や総合力を見せつけて順当に決勝まで勝ち上がってきた決勝戦。シドニー五輪決勝でも使用された収容人数8万人のスタジアムはチケット完売。満員の観客が詰め掛け、開催国・豪州を大きくサポート。グループリーグでも両国は対戦しておりますが、その試合では両国ともに準々決勝進出が決定していた消化試合だったため、豪州はティム・ケーヒル、ロビー・クルーゼ、マシュー・レッキーの強力3トップが温存、韓国は野戦病院状態でチーム編成に苦心していた事もあって盛り上がりには欠けました。その意味では両国共にベストメンバーをぶつけて来たこの決勝は“再戦”の意味合いは全くありませんでした。
この決勝に挑むにあたり、韓国は準決勝から先発メンバーを1人変更。豪州の攻撃力を警戒してか?守備的MFチャン・ヒョンスを先発起用し、それまで守備的MFだったパク・チュホを左サイドMF、ソン・フンミンは左サイドから右サイドMFに回る<4-2-3-1>のシステムでスタート。豪州は準決勝と全く同じ先発メンバーで挑み、自分達が主導権を握るための<4-3-3>でスタートしました。
試合の方は決勝独特の緊張感が漂い、集中力の高い試合の入りになりました。しかし、“慎重”ではなく、両国のシステムがピッチ上でちょうどマンツーマンで噛み合うマッチアップを生んでいたため、ゴツゴツという生音が聞こえてきそうな激しい肉弾戦に。開始早々からピッチに倒れる両チームの選手が続出しました。
そんな激しい肉弾戦による寄せの速い試合展開では得点の機会はセットプレーに限られそうなもの。8分、豪州の主将MFミレ・ジェディナックの直接FKが僅かに外れるという惜しい場面。韓国にも24分に、主将MFキ・ソンヨンの左サイドからのFKにニアへフリーで飛び込んだカク・テヒのヘディングシュートが外れるという場面。流れの中からでは豪州は23分にマーク・ミリガンの長いスルーパスに右サイドを抜け出したクルーゼのグランダークロスをに、DFをブロックしながら放ったケーヒルの枠内シュートが無失点を続ける韓国の守護神GKキム・ジンヒョンにセーブされた場面くらいでした。
しかし、先発メンバーの選考からも専守防衛で入った韓国が徐々に攻勢に転じてからは迫力も増してエンタテイメント性も増した試合展開になりました。37分、左サイドに流れたキ・ソンヨンが内側を駆け上がったキム・ジンスへパス。ゴールライン際まで持ち込んでの浮き球の折り返しをソン・フンミンがヘッドで合わせるも外れ・・・・。その1分後には右サイドのスローインからの繋ぎで抜け出したチャ・ドゥリがショートクロス。フリーのソン・フンミンが狙ったシュートは豪州MFマッシモ・ルオンゴの懸命なブロックに遭遇。43分にはキ・ソンヨンの至近距離からの直接FKがGKの正面に飛んで得点ならずの状況。
そうこうしていると前半終了間際の45分でした。豪州の後方でのパス回しから、当コラム一押しのCBトレント・セインズベリーが鋭い縦パス。バイタルエリアで韓国選手の間で受けたルオンゴが巧みなトラップで相手を交わし、そのまま右足で放った強烈なミドルシュートが無失点を続ける韓国のゴールネットに突き刺さって開催国・豪州が先制。0-1。
満員の会場を埋め尽くす開催国サポーターのボルテージも最高潮な中、巧みな試合運びから韓国の無失点記録を破り、豪州が1点リードで前半を折り返しました。
韓国も現実的な試合運びで戦略通りに同点劇 豪州は負傷者続出とファウルトラブルで苦しむ
後半に入っても試合の主導権を握るのはリードしている豪州。韓国は勝負所までは1点差で持ちこたえようと耐える戦いをしながら、個人で打開できるソン・フンミンの突破にだけは仕掛けさせるという現実的アプローチをとっていたように思います。両国共に選手交代もなく、59分に韓国はセットプレーからカク・テヒのヘッドがGK正面。60分には豪州のレッキーが左サイドから抜け出しての強烈なシュートもGKのセーブに遭い、そのシュートで得た右CKからセインズベリーが高い打点から叩いたヘディングシュートも外れ、豪州が追加点を挙げられず。
するとこの時間帯から豪州に怪しい雰囲気が漂い始めます。64分に開催国の英雄FWケーヒルが負傷もあって交代に。また、前半からDFラインに出されていた2枚の警告の数が5枚まで増え、その5枚を4バック+アンカーの中ではCBのセインズベリー以外の4人が警告を受けていました。さらに悪事は重なる事で、連戦の疲労からか?71分にクルーゼ、74分には右SBフランジッチが相次いで負傷交代となってしまいました。これにより、豪州はまだリードしているものの、交代枠3枚を全て使い切ってしまうことに。
韓国は64分にエースFWソン・フンミンに並ぶ打開力があるFWイ・グノ、72分にはハン・クギョンとJリーグ経験者の2人をピッチに投入。それでも豪州は大会を通して安定感を保つCBセインズベリーや、エリア外へも積極的に飛び出して相手の攻撃を防ぐGKマシュー・ライアンの存在もあり、コンパクトで連携の行き届いた組織的な守備による巧みな試合運びで勝利へ近づいていました。
ただし、カウンターの好機に高いインテンシテイの試合に入り切れていない途中出場のFWトミ・ユーリッチ(ウエスタン・シドニーのACL優勝立役者)がシュートが遅かったり、逆にシュートの場面までは果敢に持ち込むものの、疲労困憊でレッキーがフィニッシュでもたつくことがあり、追加点という最も重要な部分が足りていませんでした。
そして87分、後がなくなった韓国は最前線のFWイ・ジョンヒョプに替えて、CBのキム・ジュヨンを投入し、空中戦に滅法強いCBカク・テヒを最前線に上げてパワープレーを敢行。日本の某放送局の解説者がこの采配を批判する中、91分でした。韓国の後方からのロングボールに、そのカク・テヒが競って落とし、ソン・フンミンが懸命にマイボールにし、キ・ソンヨンが前へ繋いだパスを再び受けたエースFWソン・フンミンが自らエリア内へ持ち込むとGKと1対1に。国際大会の決勝の追加タイムという状況に動じず、韓国のエースが冷静に左足で決め、韓国が土壇場で1-1の同点とし、そのまま4年前の決勝と同じく延長戦に。