ブンデスリーガ第3節のレヴァークーゼン戦では本職のセンターバックが出場停止と負傷で全員起用できなかった事で、4バックを(左から)ファン・ぺルナトーダビド・アラバーシャビ・アロンソーフィリップ・ラームで組む“ゼロバック”により3-0と完勝するまでに至っています。尚、昨季はアラバのポジションで3バックか4バックかを試合中に変更していましたが、今季はラームのポジションでシステムを調整しているのも特徴と言えます。ちなみにレヴァークーゼンは昨季4位の強豪。ペップの90分間相手を自陣に押し込むサッカーは3年目を迎えて完成形に近づいていると言えるでしょう。
何より、ペップ就任以来は怪我に悩まされ続けていたハビ・マルティネスとチアゴ・アルカンタラのスペイン代表コンビが健康体を維持しているのが過去2年間との大きな違い。ハインケス時代はダブルボランチの一角だったハビが最終ラインからビルドアップし、バルサ産のチアゴが緩急自在のテクニックでパスワークの中心となってゲームメイクする現在のバイエルンは娯楽性も力強さも兼備しています。特にチアゴはシャビ・エルナンデスとアンドレス・イニエスタという最強バルサ時代のMFコンビを足して2で割ったような超絶技巧と豊富なプレービジョンの持ち主として、彼のプレーを見ているだけで筆者はウットリしてしまうものです。
ペップはバルサ時代にシーズン開幕前に開催さえる欧州スーパーカップやスペインスーパーカップでも負けた事がないほど、タイトルマッチに滅法強い監督でもあります。娯楽性を称えられていますが、何より「勝つためにこのサッカーをしている」ので、今まで以上に貪欲に結果を奪いに来た今季は、間違いなく過去2年より、いや2012-2013年シーズンの”3冠イヤー”よりも今年のバイエルンは強いはずです。
さらに、今季のバイエルンはチリ代表MFアルトゥーロ・ビダルを獲得し、彼のアグレッシヴなボール奪取力により、ショートカウンターの鋭さが一際増しています。それは昨季までのゲーゲン・プレッシングを武器にしたドルトムントの長所に似た要素でもあり、そのドルトムントは今季からポゼッションを導入した事で“バイエルン化”しています。2強が共にお互いを認めた上で、チームの進化にお互いの武器を導入したのも面白い変化。この2強の動向が俄然楽しみになるはずです。
そして、ドルトムント戦で高精度のロングフィードから2アシストしたボアテングはやはりペップの下で最も成長している選手である事が証明されたような試合でした。身体能力の高さを活かした守備面での貢献はもちろん、両足で、しかもダイレクトで両ワイドの選手に弾道の速いサイドチェンジも何度も蹴り分けられる。最終ラインの配置換えによるビルドアップの変化で主導権を握るのは、バルサの監督時代に、「試合のリズムを変えるため」とCBを選手交代のカードを使って真顔で語っていたペップならでは、ですが、ボアテングはペップの薫陶を受けて成熟した選手になりました。ハビが最終ラインでも落ち着いてプレーできるのは、DFリーダーとしてラインも統率できるようになったボアテングの成長の証。少し前の当コラムでも書きましたが、筆者はやっぱりボアテングが”世界最高のCB”だと思います。
ただ、バイエルン3冠の鍵は、“ロッベリー”の復帰よりも、チアゴとハビ、唯一の“本職CB”ボアテングの健康体維持になるでしょうか?代表ウィーク明けにはロッベンが復帰しそうなので、まずは2年連続して負傷者続出でシーズン終盤に失速しているため、今後はコンディション管理でも「さすがペップ!」と思わせるマネジメントが出来れば、悲願の3冠も達成できるでしょう。