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西野朗監督がガンバ大阪に残したビッグタイトル「攻撃サッカー」(後編)

10年間で4度のリーグ最多得点 攻撃サッカーを支えた守備的選手の攻撃意識

 西野朗監督の就任期間はガンバの得点数が1試合2点ペース、もしくはそれ以上のシーズンが多い事が明確になっており、実に就任期間の10シーズンで4シーズンが「リーグ最多得点」の仮想“タイトル”を獲得。それは長谷川健太監督の下で達成した国内3冠独占の昨季でも満たしていない数字です。

 そして、得点数とは打って変わり、失点数は順位や得点数が上がってもあまり変わっていません。それだけ守備力がないという事ではなく、攻撃に対してのチーム全体の意識が強く、DFラインを高く設定していて、後方は少ない人数でリスクをかけて守っているという事です。リスクを賭ける事は工夫する事を考える事にも繋がります。ガンバ大阪のオリジナリティ溢れるサッカーはリスク覚悟のスタイルだったからこそ生まれたのかもしれません。

 考えてもらいたいのは、いわゆる“ガンバ大阪黄金の中盤”と称される、MF橋本英郎・明神智和・遠藤保仁・二川孝広の4人の中盤の選手は、二川以外の3選手は本職がボランチの選手。攻撃的なメンバーを揃えてるか?と言うよりは、この中盤の人選を見る限りではバランス重視の選手選考にも思えます。また、失点が多いと度々批判されたDFラインに入る選手は日本代表歴もあるDF宮本恒靖・山口智・高木和道や、Jリーグ界の”アメリカン・ドリーム”(当時J2のモンテディオ山形に入団し、以後複数クラブで活躍してガンバ大阪でキャプテンとしてJ1リーグを優勝)を体現したとも言えるDFシジクレイです。Jリーグでも経験豊かな名手揃いのメンバーが並んでいたのです。

 2006年に加入した元日本代表MF明神智和が加入当初はガンバの攻撃的なスタイルになかなかフィットできませんでしたが、次第に必要不可欠な存在になっていったように、チームの選手ひとりひとりに“攻撃の意識”を植え付けていったからこその攻撃サッカーというスタイル確立に繋がったと言えます。

本当に『3点取らないと勝てないのか?』 個人技光る裏に寂しさ募る

 
 その西野監督が2011年シーズンを最後に契約満了で退任後、2012年も最多得点を記録しながらもJ2降格の憂き目を経験したガンバ大阪。クラブ史上初のJ2での戦いとなった2013年シーズンから現在の長谷川健太監督が就任し、就任会見から「3点取らないと勝てない」を理由に、攻撃マインドに満ちたガンバに組織的な守備ブロックの導入を施し、2013年はJ2リーグを優勝。2014年にはJ1昇格初年度にしてJ1リーグ優勝。そして、それだけでなく史上初の昇格初年度での3冠を達成しました。

 しかし、本当に「3点取らないと勝てないのか?」J2へ降格した2012年シーズンはリーグ戦で3点以上取った試合では全て勝利しました。(9試合)逆に、昨年はアウェイでのヴァンフォーレ甲府戦で3-3のドローという結果もありました。それも終盤に遠藤保仁と宇佐美貴史をベンチに下げる守備固めをした末の逆転を食らった上でのアディショナルタイムでの“事件”からの同点劇。現在のガンバ大阪は昨季の3冠により、結果から見れば“全盛期”のはずですが、ACLで苦戦するガンバ大阪の試合では解説者が思わず、「全盛期のガンバ大阪なら、もっと前線でボールをキープして~」などとポロッとこぼしているのを耳にしました。

 つまり、コレは今のJリーグ自体のレベルがガンバ大阪がACLで優勝した2008年頃よりも下がっている事を認めているような発言だと思います。解説者の言葉とは、威勢よく発せられる言葉よりも、ふとした時に出る言葉の方が本音であるような気がしました。

ガンバ大阪は、宇佐美貴史は、サッカーファン以外をも魅了する存在になれるか?

 現在のガンバ大阪は決して攻撃的なサッカーをしているチームではありません。しかし、ボールを奪ってからの速攻を重視しているからこそ、ボランチに定着した今野泰幸のボール奪取力が活きていたり、宇佐美貴史とパトリックの個人技も活かしやすいようなメカニズムになっています。ただ、それだけではマニュアルを守るアルバイトの仕事でしかない気がします。“黄金の中盤”や、山口・宮本・シジレクイといった選手達はもっとピッチ上で考えていたはずです。その差が、タイの強豪であるブリーラム・ユナイテッド相手にACL初勝利を挙げた第4節でのシュート数19本(ブリーラム)VS4本(ガンバ)という数字に表れているような気がします。

 かつてはマンチェスター・ユナイテッド相手に20本以上のシュートを浴びせていたガンバ大阪はサッカーファンではない人達をも魅了していました。今のガンバ大阪は3冠獲得でJリーグファンを魅了したかもしれませんが、海外サッカーのファンや、普段はサッカーなど観ない人々へは心を打つモノが少ないのではないでしょうか?

 宇佐美が、宇佐美が、と言っても、やっぱり最初に出てくるのは遠藤なわけで・・・・、もっと宇佐美はパトリックの影に隠れずに前面に出て、称賛と批判を真っ向から受けるようになった方が良いのではないでしょうか?

 それでも、かつてはパトリック・エムボマやアラウ―ジョ、マグノ・アウべスといった得点王を獲得してきた外国籍選手が担った役目を現在は日本人が担って3冠獲得に至った事を“成長”として喜ぶべきなのか?複雑な想いを感じるのは僕だけでしょうか?