先日のクラシコに勝利し、首位バルサに勝ち点1差と詰め寄ったマドリー。スコアも3-1と快勝であり、お祭りムードが続いてもおかしくはない。しかし、意外にも現実的なニュースが飛び込んできた。
「マドリーファン、80%以上がベイルよりイスコ出場を望む」
これはスペイン国内で取られたアンケートだが、112億円もの移籍金で昨年マドリーに加入したベイルより、マラガで着々と実力をつけてきた23歳イスコの方がスタメンに適しているという結果だ。
それもイスコの支持率は80%を超えている。ベッカム、ジダン、ラウールなどスター選手をかき集めた銀河系軍団から約10年。ロナウド、ベイ ル、ハメスと第2次銀河系軍団が誕生した中にあって、ファンの心理は意外にも現実的だ。
銀河系軍団とは、選手の総年俸が銀河系のごとき数字に届いた事から呼ばれるようになったものだ。マドリーの全権を握るといっても過言ではないフロレンティーノ・ペレス会長からすれば、銀河系軍団を作った方がグッズ販売などにも勢いがつく。
ベイル、ロナウド、ベンゼマで構成される3トップは、選手の頭文字を取ってBBCと呼ばれ、日本にもファンは多い。マドリー=豪華で派手なプレーを見せてくれる。そうした意識が広がる事でクラブのブランド力も上がるわけだ。
ところが、目の肥えたマドリーファンは本当に大切な存在が何かを理解している。そして、大切な存在が常にマドリーでは不 当な使いを受けてきた事もだ。
☆捨てられてきた陰の功労者たち
昨季、レアルはついに10度目のCL制覇(デシマ)を達成した。ロナウドはCLでのゴール記録を塗り替え、試合も王者バイエルンを4-0で粉砕するなど豪華なものだった。世界1の高速カウンター、ラモスやペペのファイト溢れるディフェンス。
サポーターはそれを見るたびに興奮し、選手を鼓舞する。
しかし、レアルでは忘れ去られているかのように静かなポジションがある。MFだ。昨季はアンカーのX.アロンソ、インサイドハーフのモドリッチ、ディ・マリアが献身的に動き回り、チャンスメイクからディフェンスまで全てに貢献した。いわゆる縁の下の力持ちと呼ばれる存在なのだが、銀河系軍団のレアルではあまりにも縁の下すぎてしまう。
チームの象徴であるロナウドも、全く守備には参加しない。それがクラシコだろうと、CLの決勝だろうと同じ事だ。彼が守備に回らない分をSBのコエントランや中盤のモドリッチらが必死にカバーするのだ。
しかし彼らに光は当たらず、最後にゴールを決めるロナウドに全てを持っていかれてしまう。コエントランはポルトガル代表でも全く同じ作業をこなしており、サッカーの楽しさを忘れてしまっているのではないかと心配になるほどだ。
それでも良い。一部のサポーターや監督、フロントが縁の下からチームを支える選手たちの頑張りを認めてくれれば良いのだ。しかし、最も大事なフロントが彼らを粗末に扱うきらいがある。
先ほども書いたようにペレス会長にとってはロナウドやベイルが神のような存在であり、それを支える選手たちには目もくれない。代わりなどいくらでもいるといったスタンスだ。だが、サッカー界を探してもレアルほど優秀な「汗かき役」を抱えるチームは少ない。
アーセナルへの放出が噂され、いまや出場機会が激減しているドイツ代表MFサミ・ケディラ、昨季デシマの1番の貢献者と言われながらハメス・ロドリゲスと入れ替わるようにユナイテッドへ放出されたアルゼンチン代表MFディ・マリア、アンカーの位置からチームを支え、移籍先のバイエルンでも圧倒的なパフォーマンスを見せる元スペイン代表MFシャビ・アロンソ、ロナウドへのアシスト数NO1の記録を持ちながら、アーセナルへ放出 されたドイツ代表MFメスト・エジル。彼らはロナウドらスター選手を陰で支え続け、チームの勝利に貢献してきた。しかし、最終的には不要な選手として放出されている。
それは彼らの能力によるものではない。バイエルンは32歳のシャビ・アロンソをすぐに主力として使い、アーセナルも44億円も支払ってエジルを獲得した。ディ・マリアが争奪戦になったのも言うまでもない。
世界のあらゆるクラブがマドリーから放出された汗かき役(エジルは少し違うが)の獲得を狙ったほど彼らは優秀な選手だった。それはロナウドらチームメイトのコメントを見てもよく分かる。