ただし、バルベルデが満を持して挑むメガクラブ=バルセロナは現在、革命を必要としている。
現役時代にヨハン・クライフ率いるバルセロナでプレーしていたバルベルデだが、それは僅かに2年。“哲学”を受け継ぐ・更新する人物だとは思えない。
組織が完全に練り上げられた現代サッカーにおいて、それを打開するスーパータレントの個で勝負する。それはレアル・マドリーとジヌディーヌ・ジダン監督の姿かもしれない。「レアル・マドリー=FWのサッカー、バルセロナ=MFのサッカー」と表現できた時代を経て、現在のこの2チームは非常に似て来た。
ジダン監督は現役時代の華やかさとは無縁で存在感の薄い指揮官だが、柔軟なローテーション起用と現役時代からのカリスマ性でチームに一体感をもたらした。コンディションの良い選手をフラットに起用していく采配は特筆すべきものかもしれないが、何か特別にピックアップできるような戦術・戦略はない。逆に、現在のマドリーには弱点もなくなった。世界最高の選手だったジダンは、プレーヤーズ・ファーストの精神を考慮してチームを調整しているのかもしれない。
バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は、「クラブ、そしてこのチームのプレースタイルを理解していること。下部組織を重用することができること。判断力、経験、そしてバルセロナの哲学を持った人物」とバルベルデ選出の理由を述べている。
バルセロナは首都のチーム=レアル・マドリーよりも選手層の特に“量”で劣る事が多いため、これまでは戦術家タイプの監督を多く採用してそれを補って来た。しかし、特徴があまりない存在感の薄い?バルベルデの招聘は、クラブというよりも現代のサッカーに即した決断なのではないだろうか?
バルセロナがネイマールを獲れば、マドリーはギャレス・ベイル。ルイス・スアレスならハメス・ロドリゲスのように、ライバルを意識したプロモーション編成も多いからこそ、ジダンやカルロ・アンチェロッティのような「調整型監督」の必要性をバルセロナも感じたのだろう!
クライフやフランク・ライカールト、グアルディオラにルイス・エンリケ。バルセロナでCL優勝を成し遂げた監督は全員が現役時代もスター選手だった。マドリーもジダンはもちろん、アンチェロッティも名選手の系譜にある選手だった。
果たして、「普通の人」バルベルデは「クラブ以上の存在」バルセロナで、「選手以上の存在」リオネル・メッシらをどう束ねるのか?一般人の我々は「普通の人」の手編み捌きに期待したい!