3ポイントまでのジレンマ
【明治安田生命J1リーグ第1ステージ第3節】
サンフレッチェ広島2-2湘南ベルマーレ
[得点者]
<広島>ウタカ(67分、PK)、オウンゴール(95分)
<湘南>パウリーニョ(46分)、藤田(71分)
昨年度のJリーグ王者・サンフレッチェ広島がゼロックス・スーパーカップを制して以降の公式戦で4戦未勝利に陥っている。AFCチャンピオンズリーグでは2戦2敗で最下位、明治安田生命J1リーグ第1ステージでも1分1敗となり、16位タイの位置からのスタートとなっている。
この日ホームに迎えたのは昨季J1昇格初年度にして8位に躍進した湘南ベルマーレ。成績以上に昨季のJ1で走行距離・スプリント回数で共にリーグトップの数字を叩き出したアグレッシヴな“湘南スタイル”が脅威だ。しかし、今季は日本代表にも定着したU23代表の主将DF遠藤航が浦和レッズ、チームの主将を担って来たMF永木亮太も鹿島アントラーズ、守護神のGK秋元陽太がFC東京へとセンターラインを務めた中心選手がステップアップとなる移籍でチームを離れた。それでも曹貴裁監督が続投を決断した事で、監督就任5年目のシーズンでも変わらぬスタイルの“進化”と“深化”を目指している。
【マッチレポート】両者がお互いのスタイルを貫く好ゲームもフィニッシュに精度欠く
試合は開始1分も経たない間に両チームが自分達のスタイルの強みを出そうとした。広島が最終ラインとGK林卓人の間で最後方からも緻密なパスを繋いでいくのに対して、湘南は前へ前へとプレッシングに選手を送り込んで行く。湘南の連動したプレスに対して、広島もロングボールを蹴って逃げるのではなく、的確な判断と確かなテクニックでプレスをいなしていく。
湘南はこの日、広島対策として、もともとの3バックから4バックに変更。広島のサイド攻撃に対して、<4-4-2>のSBとサイドMFのダブルマークで対応する戦術ディティールに変更があったものの、継続発展させて来た“湘南スタイル”は不変だった。
試合展開としては開始25分まではサンフレッチェが好機を量産。湘南の注意がサイドに集まっていた事を活かし、サイドは突破口ではなく起点として使った。バイタルエリアで空いたピーター・ウタカと柴崎晃誠にボールを預ける事で中央突破を狙ったり、中央で引き付けてから逆サイドへ展開する事で攻撃に“幅”が作れていた。特にウタカの起点となるプレーやパス出し、ゴール前での強さも際立っていた。
しかし、両サイドからのクロスや、中央からのスルーパスまでの崩しに至るものの、ややラストパスがズレると、ウタカや柴崎のシュートは枠を外れてしまい、なかなか得点できず。次第にこの崩しの流れに慣れた湘南に中盤でボールを奪われてカウンターを浴びる展開に。それでも広島は湘南にシュートすら撃たせずに試合を運び、スコアレスで前半を折り返した。
“湘南スタイル”の真骨頂で失点も、最後はパワープレーから勝点1をもぎ取る!
しかし、後半開始早々1分も経たない時間だった。湘南は前線左サイドでキープして広島のDFラインを押し下げてバイタルにスペースを作ると、サポートに入ったMFパウリーニョがスペースに自らボールを運び、コースが見えると左足を一閃。豪快なミドルシュートが昨季リーグ最少30失点を誇ったGK林をも破ってゴールネットに突き刺さるゴラッソが決まって、アウェイの湘南が先制する。