欧州の穴場 カタルーニャの歴史を物語る史跡の街
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フランスと国境を接しているだけあってスペイン·カタルーニャ自治州は文化·芸術面においてその独自性が際立っている。まだバルセロナのエル·プラット空港に乗り入れしておらずライアン航空機が着陸したのはジローナのコスタブラバ·ブラバ空港。リムジンバスの乗車券はバルセロナではなくジローナ駅行きを購入した。
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日本人観光客は正直少ないかもしれないが、欧州各国のツーリストには大人気の穴場。紀元前一世紀から外敵からの侵攻に備えた二つの要塞と城壁。石畳の細い路地や階段が入り組んでいる。まず足を運ぶべきはパセオ·デ·ラ·ムラル:Passeig de la Muralla。旧市街を取り囲む中世の城壁の上に設けられた遊歩道。古代ローマから、ロマネスク/バロック/ゴシックと異なる時代の建造物が自然と融合して凝縮された街並みを一望できる。写真はオニャル川沿いのカラフルな住宅群。スペインから追放される十五世紀までは存在していたのが旧ユダヤ人居住区。
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ヘブライ文字で記された書物が歴史の痕跡を残す。聖マリア大聖堂は、幅二十三メートルの身廊(※入り口から祭壇までの部分)で知られるローマカトリック教会。駅前で目にしたのは展覧会の宣伝広告。『il·lustrador, 1904-1912』の会期は、2009年6月12日まで。叔父から絵画技法の指導を受け、マドリッド芸術大学に通い十九歳でパリへと旅立ったフアン·グリス:Juan Gris【1887年3月23日生-1927年5月11日没】。
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同展はピカソと出逢いキュビズムに傾倒する以前、週刊誌にイラストを描いていた当時の作品展示。
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カカオを欧州に持ち込んだコルテス スペインの老舗チョコレートメーカーはジローナにある
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カバー写真は日本でも購入できるトラス社のゼロ·ダークチョコレート。同社はジローナで1890年に創業。当時から砂糖を加えないチョコレート製造に拘る同社はグルテンフリーのパイオニア。工場はフランスの国境から六十キロ、バルセロナ空港からだと倍の距離。売り上げの35%以上が国際市場であるのも頷ける。本場ベルギーの企業との技術提携により向上した品質で、世界各国で愛食されている。スペイン語のチョコラ—テの語源は、アステカの言語で「苦い」を意味するxocollatol:ショコラトル。現在のスペインでも濃厚なチョコレートを飲むことはできる。もともとカカオは中南米では飲み物だった。スペインを通じてヨーロッパへと拡がり、固形のチョコレートを発明するのはオランダ。
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ホテルとしても利用されているサラゴサのピエドラ修道院にはチョコレート博物館がある。これは1534年にヨーロッパで初めてカカオが調理された場所であり、アステカ帝国を滅亡させ、メキシコを征服したエルナン·コルテス:Hernán Cortés 【1485年生-1547年12月2日没】に同行した修道士がカカオを持ち込んだのだとか。1600年代前半までは、チョコレートを愛飲したスペイン王室が他国への持ち出すことを禁じて独占していた。カタル-二ャ州ならばユネスコが1991年に世界遺産登録したポブレー修道院。カカオを調理するための”チョコレートの間”から香辛料や砂糖を加える工夫で苦味を和らげたホットドリンクが誕生する。
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