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解説者列伝「風間八宏」編、語りきれないその観察力

サッカーライターの木崎伸也氏の著書『サッカーの見方は一日で変えられる』(東洋経済新報社:刊)を開くと、冒頭、当時筑波大学の監督をしていた風間八宏さんのインタビューが掲載されている。その中で、小野伸二の動きに関して、彼が50㎝動くことで何が起きるか、そのことを詳細に語ってもらった際の驚きが描かれている。

その後、木崎氏はもっとサッカーについての知識を伝授してもらうべく、足繁く筑波まで通い、いままでのライター経験から得られなかった観戦眼というものを身につけ、
またこの体験を多くの人に伝えるべく『革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする』(カンゼン:刊)を風間八宏・木崎伸也の連名で出版した。

ここで風間さんの話に入る前に、木崎氏が触れていたある点について触れていきたい。
それはサッカーのプレーと言語の問題である。
たとえば風間さんに見えていることを、風間さん自身がうまく言葉として表現できるかというと意外とそうではないという。
そのため多くの風間語録を残すべく『サッカー批評』、現在では『フットボール批評』に舞台を移して『風間八宏のフットボール創造記』を連載している。

さて風間さんの話に戻ろう。
風間さんは筑波大学時代にフジテレビ系列の中継の解説やニュースで活躍していた。
とくに中心番組「すぽると」のマンデーフットボールでおなじみであったが、いまいち風間さんの個性や能力を発揮できていないような気がしていた。
ただ多くの解説者が複数の局に出演する中、風間さんは義理固い方だそうで、他局の仕事を拒んでいたという話が伝わっている。
その一方でCSのフジテレビNEXTでブンデスリーガの中継が始まった。
ドイツでのプレー経験がある風間さんにやっと実力が発揮できる場が現れたと思って喜んでいたら、川崎フロンターレ監督相馬監督の電撃的解任、そしてその後任に風間さん就任した。

木崎氏の本を読んでから、風間解説を楽しみにしていたので正直残念だったが、今の川崎の好調ぶりを見るとこの選択は必然であったと考えるべきであろう。

そてその就任直前、中継解説で最後に担当したのは、コッパ・イタリア準決勝、ユベントス対ACミランだった。
この試合ではじめて風間八宏、その実力を見ることになった。
この時、2つの幸運があった。
ひとつはコンテとアッレグリが総力戦を図り、試合自体が面白かったこと。
もう一つは相方の実況アナが下田恒幸だったことだ。