Foot ball Drunker〔164〕visiting 『Beşiktaş Park』イスタンブール / トルコ


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ベシクタシュの中盤で注目してほしいのがデミル·エゲ·ティクナズ:Ege Tıknaz【2004年8月17日生】。今月二十歳になったばかりのセントラルミッドフィルダー。セリエAのウディネーゼ·カルチョは、昨季ベシクタシュでスパイクを脱いだ元スイス代表の:ギョクハン·インレル:Gökhan Inler【1984年6月27日生】をスポーツ·ディレクター(SD)に抜擢。そのインレル新SDの食指が動いたティクナズ。


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実際ほんの九か月前はベシクタシュパークのペンチでこの若者の傍らにスキンヘッドの姿があった。オーストリアのラピド·ウィーンなどティクナズの才能に興味を示すクラブは多いはず。この時期多少無理をしても数年後にはビッグクラブに売れる皮算用。それにしてもインレルに白羽の矢を立てるとは流石青田買いの達人ウディネーゼ。このクラブチームも青白ではなくベシクタシュと同じ黒白縦縞のウェア。
五か国語に堪能で礼儀正しいジェントルマン。その知性に英国レスターで同僚だった二歳年下の岡崎慎司:Shinji Okazaki【1986年4月16日生】も舌を巻いたのがインレルSD。


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一方守備面では暗雲。このチ-ムを束ねる主将はセンタ-バックのネジプ・ウイサル:Necip Uysal【1991年1月24日生】。中学生年代からこのクラブで育った在籍二十年の生え抜きの左膝の十字靭帯を断裂。少なくとも半年はピッチから遠ざかる重傷。2010-11シーズンに内部靱帯断裂を患い、一ヶ月ほどチームを離れた事はあったが、この短い期間を除けば献身的で安定感のあるプレ-で常にチ-ムを支えてきた精神的な柱の不在は懸念されるところ。
香川真司:ShinjiKagawa【1989年3月17日生】の加入は2019年。然しベシクタシュパークのスタンドに初めて横断幕で日本人の名前が掲げられたのは香川ではない。


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『Çekik gözlü japon kardeşim Dr.MIYAZAKI 』の文字。右横には日の丸とベシクタシュのサポーター集団《チャルシュ:Çarşı》のロゴマーク。
故宮崎淳:Atsushi Miyasaki【1970年4月29日生-2011年11月10日没】氏は大分県出身。大東文化大法学部卒業。英国留学も経験。2011年8月から都内のNPO法人難民を助ける会に勤務し東北震災の支援復興に携わる。同年10月23日にトルコ東部ヴァン県ヴァン市を震源地とする巨大地震のマグニチュードは7.1。翌月現地で支援活動中、再度地震が発生、宿泊先の建物が崩壊し同氏は鬼籍に入った。
イスタンブール市の防災施設はアツシ·ミヤザキ交通教育・防災公園と改名された。郊外のサルエル市には、宮崎氏の名を冠した日本庭園がある。
トルコ国民も匙を投げる状況で遠い異国から助け舟を出した勇気ある行動は後世に語り継がれ、崇高なる魂が逝去を悼む人々へと受け継がれるのであれば、それは本懐を遂げたと言えるのかもしれない。【第164話了】