つまり昨季よりユーヴェは中盤に豪華な悩みを抱えていたのだ。しかし、アッレグリの4-3-1-2では3枚のセントラルMFと1枚のトップ下という並びになるため、この4名を同時起用できる。まさに願ったり叶ったりのシステムチェンジだったのだ。
就任直後から自分の色を出すのではなく、前監督のコンテを尊敬した形から入る。アッレグリの判断は実に冷静でセオリーに沿ったものだった。そして負傷者が出たタイミングで自分の色を出す。まさに完璧なスケジューリングで前半戦を戦い抜く事に成功し、このウインターブレイクを利用して4-3-1-2の成熟に力を入れるだろう。
その照準は2月24日より始まるCL決勝トーナメントであり、虎視眈々と自らのプラン完遂のため動いているのだ。
☆ユーヴェがCL優勝候補!?
前回のチェルシーVSパリのプレビュー記事の冒頭で、私はCLの優勝候補にマドリー、バイエルン、チェルシーの3つを挙げた。しかし、本音ではユヴェントスも挙げておきたいところだった。それをしなかったのは、戦力的に劣る部分があったからだ。
戦術・戦略レベルでは先 の3チームに引けを取っているとは思わないが、FWやDFなど個人の質を考えると1ランク下がる。個人能力に働きかけられると優勝までは難しいと感じざるをえない。ただ、現在アッレグリが採用している4-3-1-2が希望を見出しつつある。
今季のCLグループステージでもそうだったように、コンテ時代よりユーヴェはグループステージで苦戦してきた。12-13シーズンにはグループステージ敗退を味わい、13-14シーズンはベスト8でバイエルンに2試合合計0-4とねじ伏せられてしまった。
そして今季も最終節までもつれ込んでの2位通過だった。バイエルンとの力の差はともかく、グループステージで苦しんでいる理由はただ1つ。得点を奪う力が乏しいからである。コンテの採用した3-5-2は鉄壁の守備網を築いたが、攻撃面で厚みを生み出せない部分があった。前線にロナウドやメッシといったスーパータレントを擁していないユーヴェは、単独でゴールをこじ開ける選手がいない。
しかし前の項で書いたように、アッレグリの4-3-1-2はCBを1枚削って攻撃的なMFを1枚加える布陣だ。1枚加えたから全てが変わる訳ではないが、成熟させられればビッグクラブからでもゴールを奪うチャンスが増えるだろう。
さらに前線の顔ぶれも昨季に比べるとまずまずだ。アッレグリの下で自由を許されているテベスは、たびたび中盤に下がってボールに絡んでくる。ボールに絡む機会が増えたからか、今季は重要な試合でゴールを決める事が多い。これもアッレグリにとってはプラスな要素だ。
相棒のジョレンテが本領を発揮できていないのは気にかかるが、バックアッパーにマドリーから獲得したモラタがいるのは心強い。この3枚が負傷も無く1シーズン戦い抜く事が出来れば、CL決勝トーナメントでもそれなりの成績を収める事が出来ると感じている。
開幕間近の辞任で慌てたユーヴェ首脳陣は、急場を凌ぐべく強引にアッレグリを指名した。この判断が成功するとは誰も考えていなかったはずだが、今ではサポーターもアッレグリの仕事を高く評価している。稀代のバランサーは崩れかけたユーヴェを立て直したのである。
さらに自分の色を加え、コンテが成し遂げられなかったCLベスト4、あるいは優勝までを狙えるチームに引き上げて見せた。コンテのお下がり と批判を受けながらも、今アッレグリはコンテを超える指揮官になろうとしている。狙うはCL制覇!その1歩を2月24日ドルトムント戦から踏み出す。