仮に得点率を向上させられた場合、Jリーグ人気が高まる可能性は大いにある。Jリーグにはバルサやレアルのような金満クラブが存在しないため、J1はおろかJ2のチームとも実力に大差がない。天皇杯では番狂わせが毎年のように起こるし、昨年のガンバ大阪のようにJ2上がりのチームが1年目にJ1を制すケースも目立っている。
つまりどの試合も拮抗し、優勝争いを独走するチームが出現する可能性は少ないのだ。現に昨季も優勝争いは最終節までもつれ、リーグの終盤に限っては盛り上がりを見せた。ただし、最後だけなのだ。どういう事か。
日本のサッカーファンの間では、ACLことアジアチャンピオンズリーグの認知度・重要度がかなり低い。2007年に浦和レッズ、2008年にガンバ大阪がACLを制したものの、それ以降決勝にすらたどり着けない状態が続いている。
しかし、この事態を日本のサッカーファンは重く受け止めていない。その証拠に主に平日開催となるACLでは集客率がガクッと落ち、週末のJリーグの方がスタジアムには活気がある。しかし欧州CLでは、その逆の事態が起こる事がほとんどだ。
世界的なビッグマッチを見ようと多くのファンが駆け付け、視聴率も高くなる。それゆえサポーターもCLの価値を理解し、出場する事の意義を感じているのだ。
つまり、世界ではリーグ終盤まで残留争いとCL出場枠を勝ち取るための戦いが続くのだ。Jリーグの場合は優勝争いにスポットが当たり、残留争いに巻き込まれているチームは残留に必死になる。リーグ終盤で盛り上がっているのは上位と下位のみで、中位のチームはシーズンが終わったような空気となっている。
しかしACLの価値が上がらない以上、Jリーグ内で盛り上がるコンテンツを作らなければならない。それが2ステージ制の導入だった。リーグを前期と後期に分け、プレーオフ出場権をかけた戦いが最後まで続く構図を作りたかったのだ。
しかし、この策はいまいちヒットしていない。確かにプレーオフは地上波での中継が決定しているし、それなりに盛り上がるだろう。しかし多くの人はどういう経緯でプレーオフ出場権を勝ち取ったのかが分からない状態で見る事になる。
それほど2ステージ制のルールが浸透していないのだ。プレーオフという考えは良かったが、2ステージ制の導入で余計に分かりづらくなった。J1とJ2の違いさえ理解していない人が数多くいる中で、2ステージ制の導入はあまりにハードルが高すぎる。
やはり1シーズン制は変えず、プレーオフのみを導入した方がシンプルだったのではないかと思う。「とにかく4位以内に入ればプレーオフに出れるんだ!」という理解さえあれば、誰でも順位表と照らし合わせながらJリーグを楽しめる。
今回の2ステージ制のルールは、前期優勝チーム、後期優勝チーム、年間勝ち点数2位・3位の計4チームがプレーオフに進む事になる。つまり、前期は優勝したけど後期は12位だったという状況でもプレーオフには出られるのだ。
しかし後期リーグから見始めた人には、なぜ12位でプレーオフに出場できるのかと疑問が付きまとう。こうした2ステージ制の弊害は世界各地で起きている。
「前期は優勝したのに後期は順位がガクリと落ちるなんて、ありえない!」と考える方もいるだろうが、現に昨季のガンバ大阪が似たような事を起こしている。前期は17位だったが、後期の勝率は1位。まさに後半戦は怒涛のラッシュだった。
この場合は後期の勢いそのままにプレーオフを戦えば良いが、前期を優勝して後期が最下位だった場合は最悪だ。チーム状況が悪いままプレーオフに出場する事になり、試合のレベルが落ちてしまう。これではプレーオフを導入した意味が無い。
Jの人気を復活させるために採用された2ステージ制の復活。暗闇の中で無作為に手を付けたようなコンテンツが吉と出るかは分からないが、「ん?どういう事だ?」と思われた時点で2ステージ制は失敗となる。
攻撃的かつシーズン終盤まで全てのチームが絡んだリーグ戦、優勝を決するプレーオフ・・・。今年こそは国内リーグに日が当たる年にしたいものだ。