サッカーとは【止めて蹴るスポーツ】という言葉がある。
今、ここに【運ぶ】という言葉が足され、【止めて、運んで、蹴るスポーツ】と称されている。
これが昨今のサッカーシステムを面白くも難しくもしているのだ。

昔から、サッカーコートを3分割した際の敵陣3分の1をアタッキングゾーンと言い、このゾーンでのドリブル突破が一般的に脚光を浴び、一般視聴者にとってもわかりやすい攻撃の一端だった。
しかし、時代の流れなのか、ここ10年のサッカーは、できる限りパスの回数を増やし、その上でボールキープの時間を増やす、ポゼッションサッカーが主流になり、このアタッキングゾーンでのチャレンジ回数を減らすチームが増えたのだ。

そして、この10年のスタイルが、少しずつまた新たな形のドリブラーを生むことになる。
メッシやロイス、ディ・マリアやアザールのように、本来は真ん中でプレーすべきスキルを持った人物がサイドハーフに陣取り、スピードだけではなく足技を主体にして敵を抜き去る超技術型ドリブラーの誕生である。
チームとしては、ある種別格視されていた、特攻隊的要素のサイドアタッカーにも、インテリジェンスを求めることができ、より戦術的な攻撃が可能になった。

さらに、このサイドへの技術の移植は、今まで影に徹していたドリブラーにも再注目するきっかけになる。
これが【運ぶ】ドリブラーだ。

ボールを運ぶ所が印象的なプレーヤー達だが、なぜこんなに注目されることになったのか。

それは、サイドアタッカーがインテリジェンスを身につけてまた日の目を浴びたことで、攻撃の選択肢が増え、技量が如実に表れることになったからだ。
オーバーラップを促すドリブル、マークを外すドリブル、スペースを作るドリブルに攻撃への直線的なドリブルなど、その選択肢が増えたことで、より短時間で攻撃のシナリオを考え、それを伝達しなければならなくなったのだ。

ただ、ゴールに向かってシンプルに進めばいいというサッカーではなく、
『自分はこう進めたい!だからその為にここにドリブルする!そして◯◯にこのタイミングであそこに動いて欲しい!』
を伝えながら自分でゲームメイクできる人材はそう簡単に作れるものではない。
ストライカーは移籍しても短い期間で適応できることがる。しかし運ぶドリブラーはそう簡単には馴染めないのだ。
だからこそ、各チームその逸材を探し出し、チームのインテリジェンスを伝え、育てていくことで、徐々にチームの意図や意味を理解していくことができる。
運ぶサッカーの象徴とされるイニエスタやシャビ、シルバなど、長くチームに滞在する理由もそこにあるのではないだろうか。