仏レキップ紙の発案により創設されたUEFAチャンピオンズカップの決勝が現在PSGの本拠地パルク·デ·プランスで開催されたのは1956年6月13日。今回のPSG戴冠は当時を知る方には感慨深いものがあると思われるが既に棺桶の中か。優勝杯を掲げたのはスペイン王者レアル·マドリー。対戦したフランス王者はもちろんパリ·サンジェルマンではない。レイモン·コパ:Raymond Kopaszewski【1931年10月13日-2017年3月3日生】が攻撃のタクトを振るったスタッド·ランス。
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スタジアムの正面には偉大なる故人を偲ぶ銅像。そのレアルに見初められ三シ-ズンをマドリッドで過ごしたものの’59年に復帰。計十三シ-ズンをランスでプレーすると四度の国内制覇と二部降格/昇格を経験している。当時から浮き沈みの激しいクラブだったということか。ちなみにコパが所属した三シ-ズンと退団した1959-60まで、伝説の欧州五連覇を達成したのが白い巨人。一方’69年にパリFCが誕生するまで、フランスは欧州主要国の中で唯一、首都にビッグクラブがない珍しい国だった。遅れて発足したパリ·サンジェルマンFCは、アマチュアの三部からスタ-トだった。2019-20シーズンは新型コロナウイルス感染拡大を理由に二十八節で打ち切りとなったリーグアン。結果と1ポイントの僅差ながらリヨン、モナコ、モンペリエを上回ったランスが六位。2020–21UEFAヨーロッパリーグ予選出場権を獲得した。欧州カップ戦は筆者も生まれていない’63年以来となる快挙。
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ランス:Reimsの日本製ランス:Lance
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レーシング·クラブ·ドゥ·ランス=Lensは、フランス·パ=ド=カレー県のクラブ。それに対してスタッド·ドゥ·ランス=Reimsは、シャンパーニュで知られるマルヌ県。紛らわしいことこの上ないがフランス語でランス=Lanceといえば、中世から近代まで馬上で甲冑を纏い、片手には盾を握った騎兵達が用いた槍。伊東は鋭い槍のごとく相手の左サイドを突き刺し続けた三年間だった。
あの日あの時は■2022年8月29日リーグ・アン第四節スタッド·ランス対オリンピック·リヨン。二試合連続スタメン出場の伊東純也がフランスで初ゴールを決めた試合。後半に退場者を出してしまい金星を逃したが悲観する内容ではない。クロスを頭で決めたゴール。熱い抱擁を交わしたのは新戦力のマキシム·ブシ:Maxime Busi【1999年10月14日生】。2019-20のジュピラープロリーグでロイヤル·シャルルロワに在籍していたブシは伊東とに二度顔をあわせ一勝一敗。ダブル·ボランチの一角をレッドカードで欠いたランスは仕方なく伊東を代えてコートジボワール代表をピッチに送り出す。こちらも新加入のエマニュエル·アグバドゥ:Emmanuel Agbadou【1997年6月17日生】。開幕戦のマルセイユ戦はボランチで起用されたが本職はセンターバック。
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20年から22年にかけて伊東とは三度対戦。KRCヘンクとKASオイペンでは戦力に大きな開きがあり三連敗は仕方ないが、このアグバドゥが非常に良い選手でかなりの回数シャッターをきっている。結んだ髪とリストバンドの三色が母国の国旗なので一目で国籍が判った。冬の移籍市場で降格危機のウルバーハンプトン·ワンダラーズが移籍金は千六百六十万ポンド(約三十二億円)で四年半の契約。財政難のランスは背に腹は変えれなかったか。アグバドゥをはじめ冬に補強した即戦力が三月にはフィットすると第29節から連勝街道を驀進。トッテナム·ホットスパー、マンチェスター·ユナイテッドと、不調に苦しむビッククラブをものともせず六連勝を達成したから余裕で残留を決定。降格したランスのファンサポ-タ-からすれば、臍を噛むしかない。マーシャル·ムネツィ:Marshall Munetsi【1996年6月22日生】もセットで放出して大博打に出るしか今季のランスに選択肢はなかった。
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駅舎を背に右方向へ。公園に沿ってジェネラール·ルクレール通りを進む。ヴェル橋を渡るとポン·ド·ヴェル公園の向こうにスタジアムの照明が見える。モノレールの線路に沿ってレオ·グランジェ公園に向かえば公園の目の前がスタジアム。駅からの距離は1.7キロだから徒歩二十分もかからない。
古典と現代が調和するこの街を走るのは色とりどりのモノレール。市街中心には世界文化遺産のノートルダム大聖堂。十三世紀に建てられその高さは約百五十メ-トル。フランス国王が冠を授かり戴く式典の場だけあって厳粛で崇高な佇まい。英仏百年戦争に終止符を打ち、国王シャルル七世戴冠式が挙行されたランスまでの道を切り開きながら悲劇の最期を遂げた少女。ジャンヌ·ダルク祭りの期間にあわせて、大聖堂でをはじめ各所で開催される音楽祭は初夏のランスの風物詩。のオープニングで使用されたのが6月16日。しかし同時期に開催されたビールフェアのほうへと心惹かれるポスタ-を発見。パリへの戻りはまずFlixバスを利用。バス停のある2007年に開業したシャンパーニュ=アルデンヌTGV駅まではモノレールで移動できる。
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