「パリの夜に奇跡が起きるかもしれない・・・」パリ・サンジェルマンサポーターならびにサッカーを愛する者は、こんな希望を少しでも抱いたのではないだろうか。しかし結果はホームで1-3の完敗、今夜どころか翌週の第2戦への希望さえ失うスコアだった。
試合後にパリの監督であるローラン・ブランは、「いない者の話はしたくない」と語った。いない者とは、累積警告で出場できないイブラヒモビッチ、ヴェッラッティ、負傷欠場のチアゴ・モッタ、CLチェルシー戦で審判批判をしたオーリエの事だ。前線と中盤の核を失った状態で迎えた第1戦で、ブランはどんなアクションを起こしたのか。
彼がパリの監督にふさわしい存在であるかどうかが、この一夜で明らかになる事となった。
☆2度の対戦を無駄にしたブラン
パリとバルセロナは今季のCLグループステージでも戦っており、2014年9月30日におこなわれた1回目の対戦ではパリがホームでバルサを3-2で下している。パリが撃ち合いを制する形にはなったものの、パフォーマンスが向上してきたメッシ、バルサに馴染み始めたネイマールに得点を許しており、バルサの攻撃力を肌で感じる結果となった。
ちなみに、この一戦にルイス・スアレスは出場していない。2014W杯でのキエッリーニ噛み付き事件により、長期のサッカー活動停止処分を喰らっていたからだ。
そんなスアレスが復帰した12月10日の2回目の対戦では、パリは敵地で1-3と敗れている。この試合ではメッシ、ネイマール、スアレスと3トップにそれぞれゴールを決められており、改めて彼らの脅威を感じたはずだった。
ところが決勝トーナメント準々決勝第1戦で、ブランはこれら2試合の経験を全く活かす事が出来なかった。ホームで勝利を手にしたい気持ちは理解できるが、パリはバルサ相手に真っ向勝負を挑みすぎた。
まずは前半18分、ネイマールに先制点を許してしまう。この失点シーンでは中盤でラビオがボールを奪われ、今のバルサが得意とするカウンターをあっさり決められている。あまりに不用意なプレーであり、バルサにいつも通りの形を与えてしまった。
ネイマールは今季のパリとの3度の対戦で3ゴール挙げており、いわゆるカモにされた訳だ。しかもこの失点はただの1点では無い。バルサにとっては願ってもないアウェーゴールである。ただ打ち合いを制すればよかったグループステージとは訳が違うのだ。
パリは自分たちのミスから相手を楽にしてしまい、そこからはバルサにポゼッションを続けられる負けパターンへと入ってしまった。しかし、決められてしまったものは仕方が無い。第2戦に希望を繋ぐためにも、最少失点で第1戦を切り抜けるべきだった。
1試合で勝ちが決まるグループステージとは違い、決勝トーナメントには第2戦も存在し、そんな事はサッカーファンであれば誰もが知っている。しかしブランはまるで第2戦が存在しないかのようなアプローチを取った。
後半20分にラビオを下げ、ドリブルを武器とするルーカスを投入したのだ。これでシステムは4-1-4-1から4-2-3-1へと変更され、中盤をラビオ、キャバイェ、マテュイディの3枚で守っていた構図は消えてしまった。
前線にはカバーニを筆頭にパストーレ、ラベッシ、ルーカスが並び、まさに「点を取りに行け」という指示だった。選手たちは監督の意思を汲み、ホームの声援を受けながら攻勢に出た。
ところがその2分後、パリは一瞬の気の緩みからスアレスに追加点を許してしまう。この失点はまさに気が緩んでいたという表現がピッタリ当てはまり、前半に負傷したチアゴ・シウバに代わって出場していたダビド・ルイスがあっさりとスアレスに抜かれてしまった。
こうした集中が切れたようなプレーを、今季のパリは何度も見せている。そんな無駄な失点が国内リーグで順位が上がらない原因となっており、その悪癖がCLという大舞台でも顔を出してしまった。
後半34分には、4-2-3-1に変更して薄くなった中盤をスアレスに利用され、ダビド・ルイスがスアレスにこの日2度目の股抜きを喰らうオマケ付きで3点目を決められてしまった。この得点でスアレスもパリとの今季2試合で3ゴールを挙げた選手となった。