明治安田生命J1リーグが開幕。ここ4年で3度のJ1リーグ優勝を果たしているサンフレッチェ広島も当然のように優勝候補のチームだ。森保一監督が就任してから5年目を迎える今季のサンフレッチェだが、昨季はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)には出場していないために、今季はその過密日程から来るリーグとACLの両立を懸念されている。
実際、今大会で2年ぶり4度目の出場となるサンフレッチェの過去に出場した3大会中、2010年大会と2013年大会はグループリーグで敗退している。2013年に至っては、リーグ王者として出場していながら未勝利(3分3敗)で終わってしまった。
ただ、2014年大会はグループリーグを初めて突破してラウンド16で敗退したものの、その対戦相手のウエスタン・シドニー・ワンダラーズは同大会を制してアジア王者となった。そのウエスタン・シドニーとの対戦は2戦合計3-3と打ち合ってのアウェイゴール差での惜敗だったが、十分にアジアの舞台でもやっていける手応えは掴んでいたのだ。決勝点を演出したのが元日本代表MF小野伸二(現・コンサドーレ札幌)で、同チームを率いるのがトニー・ポポヴィッチ監督(元サンフレッチェの主将だった名DF)だったのも何かの縁だったのかもしれない。
2連覇したチームを解体した2014年の夏
その初のACLラウンド16を戦ったのが日本代表がブラジルW杯を控えていた2014年の5月だった。それから数カ月、ブラジルW杯メンバーに選出された主将MF青山敏弘がW杯で負傷した辺りから、一気にチームのバランスが崩れたサンフレッチェは急失速した。
そして、2012年と2013年のJ1リーグを連覇し、3連覇を目指していたチームにメスが入れられたのだ。
筆者が当コラムで1年半前に執筆した記事『世代交代のジレンマ』(https://soccerlture.com/dilemma_of_generation_change/)にもあるのだが、2014年8月初頭に行われたJ1リーグの第18節・アウェイでの鹿島アントラーズ戦で5失点で敗れた試合以降、森保監督は絶対的エースだったFW佐藤寿人を先発から外した。表向きには「コンディション不良」という説明がなされたが、ベンチからも外れる事があり、起用法に対する監督批判も噂された。同時期、これも不自然な「コンディション不良」により、GK林卓人、DF塩谷司も先発から外れた。
エース佐藤の代役として先発に抜擢されたのは大卒ルーキーのFW皆川佑介。長身でポストプレーが上手く、前線でボールを収められる皆川の起用は、失点数増加による修正策だったのだろう。そして、その皆川のプレーは瞬間的とはいえ、当時のハビエル・アギーレ監督にも評価され、日本代表としてウルグアイ戦にも先発出場した。他にもMF野津田岳人や、MF茶島雄介、DF/MF宮原和也等、サンフレッチェの下部組織出身の若手選手がリーグ戦で先発の機会を得て確かな経験を積んだ。
ここで2014年シーズンを部分的に比較してみる必要がある。つまり、佐藤が先発を務めた18節までと、先発を外れたその後の7試合、そして、第26節以降に先発に復帰したラスト9試合の3つのスポットに分けて考えてみる。明らかに“改革”が行われて以降に大幅に失点が減ったのがわかるはずだ。しかし、同時に得点数も減っている。それを最後に青山の復調と佐藤の先発復帰で帳尻を合わせたと言えば収まるのだが、この改革がそれだけでは終わらなかった。
【参考記事】『世代交代のジレンマ』 https://soccerlture.com/dilemma_of_generation_change/