【ベンチ入り】
GK16.河田晃兵、DF6.金正也、14.米倉恒貴、FW9.リンス
目次
唯一の3冠の可能性を残して連戦最後を迎えたガンバ~佐藤、明神、丹羽がリーグ戦4カ月ぶり先発復帰
ガンバはブラジルW杯による中断をリーグ16位と言う降格圏で迎えたものの、中断明け後の5連勝で一気に盛り返し。その連勝ストップ後はやや停滞したものの、新潟を5-0で粉砕して復調し、カップ戦含めた5連戦の過密日程へ突入。
そのカップ戦ではナビスコカップの準々決勝で阪神ダービーとなる神戸との対戦を2試合合計4-1で勝利して準決勝進出。続いて迎えた天皇杯の4回戦ではJリーグを2連覇している広島と対戦。各代表戦招集により主力欠場やリーグ戦を見据えた温存もあって、両チーム大幅にメンバーを入れ替えた試合となったものの、ガンバは中盤をダイヤモンドで組む新たなオプションによる広島対策を成功させて1-3と勝利し、ベスト8進出。実にリーグで唯一のJ1リーグ、ナビスコ、天皇杯の3冠の可能性を残しています。
迎えたこの日のリーグ戦でも3日前と同じアウェイでの広島戦。天皇杯から大阪へ帰らずに広島で調整して迎えたこの試合では、天皇杯で温存されたFW宇佐美、DF岩下、ジェソクが満を持して先発に復帰すると共に、その天皇杯で2ゴールと結果を出したFW佐藤、中盤を締めたMF明神、アジア大会へ旅立った西野に替わって先発したDF丹羽の3人を先発に抜擢。3人ともリーグ戦では4カ月半ぶりの先発出場となり、全体としては天皇杯から3人の変更と引き続いての中盤ダイヤモンドの4-4-2でのスタートとなりました☆
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【マッチレポート】先制するまでが勝負だった積極的な前半~天皇杯からガンバは3人、広島は8人の先発変更を経て
広島は日本代表に選出されていたDF水本裕貴、FW皆川佑介が先発復帰。また、天皇杯での対戦では温存されていたMF青山敏弘、高萩洋次郎、森崎和幸等も先発復帰して実に8人の大幅な先発メンバーの変更があり、同3人の変更があったガンバとの対戦となり、3日前の試合とは異なる試合展開となりました。
前半、キックオフからボールを支配したのはガンバ。近年の対戦で大差で敗れる事が多かった要因である中盤でのインテンシティ(強度)や広島の特異な可変型システムに対して、相手に合わせて3バックを組むような数合わせをするミラーゲームはせず、トップ下のような位置に司令塔・遠藤を置いて自由に動かく事で局面の数的優位を多数作って対応。また、長谷川健太監督が就任し、当ブログでもそのスタイルを”トランジションサッカー”と捉える中で、その象徴となっている攻守の切り替えの速さが選手間の距離を良くし、ひいては局面の数的優位を作っていました。
ただし、今まではやはりボール奪取をスイッチに攻撃を仕掛けるトランジションサッカーであるがゆえ、ボールを奪えば直ぐに縦へ展開し、圧倒的な個人技で打開できる宇佐美への依存度も強いのも事実。右サイドの裏にパトリックを走らせる”パットリ作戦”もその顕著な例と言えました。
この日は3分、宇佐美が左サイドでパスを受けてから自ら仕掛けたシュート。12分にも宇佐美の左サイドでのタメを作ってのマイナスのショートクロスを阿部が左足ダイレクトで狙ったシュートがポストを叩いたシーンはその代表例。15分にも宇佐美が速攻からシュートを放つなど、”トランジションサッカー”の切れ味は抜群でした。
加えて、この日は遠藤がフリーマンとして自由に動いて相手の分厚い中盤に対してもボールを支配し、”パスサッカーとトランジションサッカー”、”ポゼッション”と”カウンター”というよく2極化しそうになる要素を並行して表現する事で魅力的な攻撃を仕掛けていました。また、これを実現させる上で、1パターンな動きも目立ったパトリックではなく、リーグ戦4カ月半ぶりの先発となったFW佐藤がポゼッションにも絡みつつ、カウンターの抜け出しもしながらボールを引き出していた事も印象的でした。
そして32分、ガンバは”ポゼッションの遠藤”と”カウンターの宇佐美”が融合。バイタルエリア中央やや右から遠藤と宇佐美がワンタッチで細かいパス交換からFWの佐藤の足元へのクサビ。身体を張ってキープした佐藤が相手ともつれながらもポストし、そのボールを宇佐美が右足を一閃。地を這うシュートはGK林の脇を抜けて豪快に決まってガンバが先制します。0-1。
その後も積極的な攻撃を仕掛けるガンバは、宇佐美が鋭いシュートを連発して試合の主導権を握りながら試合を運びます。
一方の広島はサイド攻撃から日本代表へサプライズ招集されたFW皆川がポテンシャルの高さを見せて惜しいシュートを放って迫力を見せたり、サイドを起点にして中を空けた状態を作ると、DFの塩谷司が上がって”塩キャノン”を放つなどしたものの、攻撃は単発。前半はそのまま0-1と1点のリードで折り返しました。
57分以降の広島のシュートはゼロ~シュートも打たせない堅守でプラン通りの完封勝利
後半開始からリードされたホームの広島は前から圧力をかけて積極的に仕掛けてきました。前半同様に山岸智や塩谷がミドルレンジからどんどんシュートを狙ってくるものの、それでも4カ月半ぶりの先発だった丹羽を中心にぺナルティエリア内は崩されずに対応。
また、前半はガンバが主導権を握る試合展開の中、唯一ボールが渡ればガンバDFをドリブルで外したり、スルーパスであわやの場面を作っていた皆川と同じ”もう1人の大卒ルーキー”広島MF茶島雄介を執拗に警戒した模様。ガンバのダイヤモンド型MF4人は阿部と今野が中へ絞ってトリプルボランチ然として茶島が起点とするバイタルエリアのスペースを封鎖。また、ガンバはこの日の明神が神懸ったプレーの連続でセカンドボールや球際の競り合いをことごとく制していたのも印象的でした。
しかし、その”守護聖人”大明神サマや前半に利いていた佐藤が出場機会の少なさから来る連戦の疲れが見え、次第にボールを全く支配できない展開に。すかさず長谷川監督も交代策をとって修正。倉田を左サイドMFに投入し、遠藤をFW役に。ボランチには負傷明けの内田を8試合ぶりに投入。明神1人でこなしていた役割を内田と今野の2人で担当する事でケアしました。
次第に試合が落ち着き始めると、68分に宇佐美が前線にたった1人だけしかいない中でカウンターから個人技で打開してのシュートや、77分にはボール奪取から左サイドの藤春に展開しての速攻。マイナスのショートクロスから倉田が左足で狙ったシュートが共に僅かに外れる決定機も創出。
結局、後半のガンバはこのシュート2本のみで終わったものの、守備面では丹羽・岩下・今野・内田達と4人の本職CBが揃うような分厚いブロックで57分以降はシュートすら許さない集中力を研ぎ澄ませ、過密日程の5連戦を全勝で締めました(ナビスコは2試合合計で勝利と換算)。
最後は脚が止まってボールを前へ運べなかったものの、シュートすら打たせない守備意識の浸透具合は際立っており、これは決して相手に主導権を握られたのではなく、現状の最大値を出して勝利へ捥ぎ取るという策であった事を表す数字とプレー、試合展開と言えるでしょう。